文学・文具・文化 趣味に死す!

小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

アフター・ワクチン

アフターワクチン手直ししているが

年末っぽく、暇になってきました。 で、アフターワクチン手直ししているが、思った以上にミスってる。 「実はな、過去からきたおまえに会ってるんだ」 「えーーー!?」 というやりとりをした数ページ後、 「実はな、過去からきたおまえに会ってるんだ」 「…

アフターワクチン 最終回 その2

三十分。時間の感覚とは不思議なものだ。「ほら、見て、玲奈さん出てるよ」 理恵が慌ててテレビを指す。 2031年のノーベル物理学賞の授賞式の様子が流れていた。 嬉し恥ずかしそうに舞台に上がり盾を手にする。「すごいね、日本人最年少らしいよ」 彼女…

アフターワクチン 最終回 その1

注:本日2度目の投稿なので、アフターワクチン 第17回 その7、を未読のかたはそちらから! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 瓶の中身を飲み干し、一呼吸置くと瓶を落とした。苦しそうに胸を押さえる。床に倒れ、ほん…

アフターワクチン 第17回 その7

よく聞いてくれた、と言わんばかりに、「高田さんなら予想はついていると思いますが。2026年に消えたのはステファニーではないんです。もちろん、肉体が消えたのはステファニーです」「なるほど。意識を無線のように飛ばす研究をした甲斐があったという…

アフターワクチン 第17回 その6

もっと分かるように話して欲しい。それが僕の切実な願いだ。ここで死ななければならないならなおさらだ。「ガルシアさん。冥土の土産という言葉を知ってますか? 僕にも分かるように話して欲しい。冥土の土産に」 その言葉なら知っていると言わんばかりに、…

アフターワクチン 第17回 その5

リビングの扉を開けると、知らない老人がソファーに座っていた。白人の老人だった。宙を見るような瞳を僕たちの方へ向けている。その隣には見るからに屈強な背広を着た男が二人。一人は白人。もう一人はアジア系だった。「ガルシア教授」 高田は呟く。「お久…

アフターワクチン 第17回 その4

そんなことは分かっている。ワクチンを打った七十億の人間は死ぬ。でも、どうやってワクチンから逃げられたというのだ。国を挙げて、いや、世界中でワクチンは安全だと洗脳し、反ワクチンの人々に対する憎悪を植え付け、厭悪して馬鹿にする風潮を生み出し、…

アフターワクチン 第17回 その3

透き通るように青い空が広がっている。秋日の午後。寺の山には色づいた葉がアクセントを刻んでいた。 たまたま本堂から降りてきた住職と目が合った。僕は会釈し、「すごい、混んでますね」「ああ、内田さん。ご覧の通りの忙しさです。坊主、まるで儲からず」…

アフターワクチン 第17回 その2

高田の薬を飲み干すと、激しい痛みが頭と胸を襲った。そして、僕はドラッグストアーののっぺりとした床に頬をくっつけて倒れている。記憶が怒濤のように押し寄せる。何回目のタイムスリップだろうか。ゆっくり数えている暇はない。 由奈が買い物カゴを放り投…

アフターワクチン 第16回 その5 第17回 その1

アフターワクチン 第16回 その5 「黙っていたけど、おれは2021年に、2031年から来たおまえと会ってるんだ」 高田は不思議なことを言う。僕はその言葉をどう受け止めたらいいか分からなかった。しかし、頭のどこかで、そのことを納得しているもう一人…

アフターワクチン 第16回 その4

「どういうことですか?」 と高田が口を挟んだ。 高橋さんは大事なことを伝えるように、しっかりとした口調で言う。「わたしも最初は半信半疑でした。でも、未来は裕二が言ったとおりになった。あの日、裕二はなにが起きるか知っていた。知っていて、あの部…

アフターワクチン 第16回 その3

「なんで、おまえが裕二のところにいたんだよ?」 高田はエンジンを切った車の運転席に凭れるように座りながら、ゆっくりと口を開いた。「信じられないかも知れないが、2021年のあの時、裕二の体の中身はおまえだったんだよ」 僕の結婚式の日に、裕二は…

アフターワクチン 第16回 その1 その2

2021年 体がふわりと傾いて、僕は冷たい床の上に倒れていた。 ここは……。明るい店内。商品が陳列してある。ガルシア達に殺される直前に立ち寄ったドラッグストア。 由奈が駆け寄ってきた。「裕二っ、大丈夫!?」 目を見開いて僕をのぞき込んでいる。 脳と…

アフターワクチン 第15回 その3

高田は木陰のベンチに僕を連れて行った。僕は大分落ち着きを取り戻していた。モバイルを見ると、僕の寿命はあと五年もあった。あと五年ということは前から分かっていたはずなのに、妙な違和感が生じてくる。「これ、見覚えないか?」 高田が鞄から取りだした…

アフターワクチン 第15回 その2

僕と高田は喪服の集団に紛れて門をくぐる。僕たちは法要をするわけでもないので普段着であった。 たまたま本堂から降りてきた住職と目が合った。僕は会釈し、「すごい、混んでますね」「ああ、内田さん。ご覧の通りの忙しさです。坊主、まるで儲からず」 住…

アフターワクチン 第15回 その1

「はっ!」 目が覚めた。自分の声に驚く。「おいおい、大丈夫か?」 高田は心配そうに横目で僕を見た。 僕は車の助手席に乗っていた。高速道路の単調な景色のせいか、いつの間にか眠ってしまって、嫌な夢を見た。「大丈夫か? うなされてたぞ」 ハンドルを握…

アフターワクチン 第14回 その6

由奈は死んでいない、と男は言った。つまり、おまえの返答次第では殺す、という意味だ。ピクリとも動かない由奈は死んでいるのか生きているのか分からない。僕は由奈を巻き込んでしまったことを、今更ながら後悔した。過去に戻ったとき、もうすこし慎重に行…

アフターワクチン 第14回 その5

僕と由奈はいつものように、御徒町の屋台でビールを飲みなが食事をして、僕たちはアパートの前のドラッグストアに寄った。由奈があれでは嫌だというので、新しいコンドームを買う。 店を一歩出たとき由奈が、「あ、買うの忘れた。先帰ってて」 店の中に戻っ…

アフターワクチン 第14回 その4

昼休みに由奈と昨日の話をしようとしたら、山沖先輩も一緒に来るという。断るわけにもいかないので、三人で定食屋に入った。今日のお薦めは鯖味噌。三人とも鯖味噌を注文した。鯖が美味しい季節になってきた。こうやって、自然は一年、コロナなど関係なく過…

アフターワクチン 第14回 その3

コロナ過ということもあり、二次会は設定しなかった。この時代の僕と理恵は明日からの旅行の準備に取りかかる。国外は無理だったので、国内旅行。結局、僕たちは一度も海外へは行かなかった。 高田は友人達と飲みに行くという。そういう約束になっていたよう…

アフターワクチン 第14回 その2

ファンファーレが鳴り響く。灯りが落とされて、開場の入り口にスポットライトとが向けられる。ゆっくりと扉が開き、僕と理恵が腕を組んで入ってきた。僕は幸せそうな顔をしていた。自分の結婚式を生で見られるなんて、普通じゃ考えられないこと。いま裕二の…

アフターワクチン 第14回 その1

マイザーによる治験データの改ざんが行われている。製薬メーカーは2009-2014の間に130億ドルの罰金を支払っているが、問題は何も解決されていない。今回もその繰り返し。いや、今回罰金を支払うのは製薬会社の悪を野放しにしてきた人類そのものだろう。 ある…

アフターワクチン 第13回 その7

「意識と体を分離?」 僕は首をかしげる。そんなこと、俄には信じられない。 高田は念を押すように言葉を並べていく。「意識や記憶を、体から分離させて飛ばすことが出来るんだ。理論的には。分かりやすく言うと、モバイルAからシムと記憶メモリーを取りだし…

アフターワクチン 第13回 その6

「冗談だろ? そんなのあるわけない」「でも、記憶のエラーだっていう確証もないんだぜ」「おまえ、科学者だろ? 本当に信じてるのか、前世とか」「科学者はあらゆる可能性を排除しない。あり得ない、とか頭から否定するのは素人だ。もちろん、前世の記憶が…

アフターワクチン 第13回 その5

六時ぴったりに、高田は来た。髪が肩に届くほど伸びていた。ただ、五年前と顔つきはほとんど変わっていない。少しやせたくらいだろうか。「これ、土産」 渡されたのはワインだった。三本揃った。今日はとことん酔えそうだった。「高田君、久しぶり、上がって…

アフターワクチン 第13回 その4

寺には午前中に行った。駅から寺まで、僕は理恵の手を握りながら歩いた。特に意味はないのだけれど、なぜか手を繋いで歩きたいと思った。理恵もいやがることなく、僕の手を握り返してくれる。爽やかな、秋の一日。 ここのところ、日増しにワクチン副反応によ…

アフターワクチン 第13回 その3

ケーキも食べ終え、珈琲を飲みながら、僕は何の気なしに、「僕が死んだら、理恵はまだ三年以上あるわけだし、僕に気兼ねなく好きなことしたらいいからね」「なにそれ?」彼女は俄に表情が固まり、「そっか。もし達也よりわたしの方が先に死んだら、達也は好…

アフターワクチン 第13回 その2

ぽつんとマンションの一室で一人たたずむ。暇がだんだん充満してきて、書道でもしようと思い立つ。いつも使っていた清代の歙州硯が見当たらない。しばらく探して、ダイアモンドを買うために売ったことを思い出した。他にも気に入っている硯は何面かある。今…

アフターワクチン これまでのお話

2021年 ワクチン接種が始まる。日本でも十二月にはワクチンパスポートが開始され、翌年七月にはワクチン接種法が制定され、年二回の接種が義務化される。ワクチン接種義務違反は強制接種の対象となる。しかし、2025年ごろから超過死亡が著しく増加し…

アフターワクチン 第13回 その1

あなたたちは社会の一員であり、社会からあらゆる恩恵を受けているのだから、社会に対する責任を負わなければならない。より大きな社会的利益のために、自己の判断という個人的な権利を放棄しなければならない時が今やって来た。 合衆国大統領首席医療顧問 …