現代の姥捨て山である。古くて新しい話である。
年老いた老人をどうするかというのは、今に始まった話ではない。棄老伝説、姥捨て山の話は日本だけではなく世界中にある。
現代は、「これだけテクノロジーと行政サービスが発達しているのに!」という思いがあるので、棄老や赤ちゃん殺しに思いが至らぬだけである。
ちょっと昔、1980年代くらいまでは、以下の小説のような老人の安楽死が行われていたのかもしれない。
yoshinori-hoshi.hatenadiary.jp
ネタバレ有り
松山ケンイチは介護士である。それも、超優しい優秀な介護士。その介護士が42人の年寄りを殺害するという話し。
42人の年寄りは、痴呆等により、家族に多大な負担を掛けている。その家族を守るために、また、老人のために、松山は老人を殺す。
実際に、そのことによって救われる家族もいる。
長澤は検事で松山の犯行を暴く。
松山は自分がやったことは正しいと主張する。
長澤は少々ヒステリックに、あなたに正義なんかない、と言うが、介護の現場を知らないからそんな呑気なことが言えるのだ、と反駁される。
実際に介護の現場を知らなくても、身の回りに呆け老人が居なくても、呆け老人の介護が半端なく大変だなどと言うことは誰もが知っている。
介護殺人は八日に一件の割合で起こっている。殺人として認定されず、見逃しているケースを入れれば、そんな生やさしい数ではないだろう。
露骨に手を下さないまでも、老人が呆けてることをいいことに、「最近食欲がないんです。歳だから仕方ないんですが」などと餓死させるケースも多いだろう。
行政が何とかしろ!!
というのは簡単であるが、行政に出来ることは見逃すことぐらいではなかろうか。
本作品は介護問題を考える上でもなかなか興味深い作品である。お薦めである。
