2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧
透き通るように青い空が広がっている。秋日の午後。寺の山には色づいた葉がアクセントを刻んでいた。 たまたま本堂から降りてきた住職と目が合った。僕は会釈し、「すごい、混んでますね」「ああ、内田さん。ご覧の通りの忙しさです。坊主、まるで儲からず」…
高田の薬を飲み干すと、激しい痛みが頭と胸を襲った。そして、僕はドラッグストアーののっぺりとした床に頬をくっつけて倒れている。記憶が怒濤のように押し寄せる。何回目のタイムスリップだろうか。ゆっくり数えている暇はない。 由奈が買い物カゴを放り投…
アフターワクチン 第16回 その5 「黙っていたけど、おれは2021年に、2031年から来たおまえと会ってるんだ」 高田は不思議なことを言う。僕はその言葉をどう受け止めたらいいか分からなかった。しかし、頭のどこかで、そのことを納得しているもう一人…
嘘八百 京町ロワイヤル中井貴一Amazon前作が面白かったので観たが……。前作のような面白さはなかった。焼き物に関する蘊蓄も特段なく、広末の父親が自殺に追い込まれた悪い骨董屋を懲らしめる、という話し。45分もののドラマで十分な内容だ。第三弾はたぶんな…
「どういうことですか?」 と高田が口を挟んだ。 高橋さんは大事なことを伝えるように、しっかりとした口調で言う。「わたしも最初は半信半疑でした。でも、未来は裕二が言ったとおりになった。あの日、裕二はなにが起きるか知っていた。知っていて、あの部…
「なんで、おまえが裕二のところにいたんだよ?」 高田はエンジンを切った車の運転席に凭れるように座りながら、ゆっくりと口を開いた。「信じられないかも知れないが、2021年のあの時、裕二の体の中身はおまえだったんだよ」 僕の結婚式の日に、裕二は…
行ったが参加はしていない。 わたしは臆病且つ卑怯なので参加出来なかった。心の中で喝采を送っていた。 おそらく、メディアはこのデモを黙殺するはずである。実際、メディアは現地に来ていなかった。youtuberのような人はいて、なにか解説をしていた。 わた…
STAND BY ME ドラえもん2 DVD(特典なし) 水田わさび Amazon わたしは基本的に感動しないし、感動させようとして作られているものには就中感動しない質である。 みんなが「泣けた」という作品で泣いたことはこれまでただの一度もない。 DVDを貸してくれた人が…
2021年 体がふわりと傾いて、僕は冷たい床の上に倒れていた。 ここは……。明るい店内。商品が陳列してある。ガルシア達に殺される直前に立ち寄ったドラッグストア。 由奈が駆け寄ってきた。「裕二っ、大丈夫!?」 目を見開いて僕をのぞき込んでいる。 脳と…
毎年恒例の記事だ。 リンクを張っておくので、比べて欲しい。 15年ぶりにジーンズを買った。7,450円のつもりが…… - 文学・文具・文化 趣味に死す! リーバイス501 LVC を1年とちょい履いたのでその変化を - 文学・文具・文化 趣味に死す! 今週のお題「ジー…
サンダーボール作戦 (字幕版) ショーン・コネリー Amazon いまプライムでは007が見放題だ。ただ、007は続けてみていると飽きてくる。 古い作品なので、アクションなどは比べてはいけない。 海中での戦いなどなかなか見所がある。 リュックサックのようなもの…
高田は木陰のベンチに僕を連れて行った。僕は大分落ち着きを取り戻していた。モバイルを見ると、僕の寿命はあと五年もあった。あと五年ということは前から分かっていたはずなのに、妙な違和感が生じてくる。「これ、見覚えないか?」 高田が鞄から取りだした…
僕と高田は喪服の集団に紛れて門をくぐる。僕たちは法要をするわけでもないので普段着であった。 たまたま本堂から降りてきた住職と目が合った。僕は会釈し、「すごい、混んでますね」「ああ、内田さん。ご覧の通りの忙しさです。坊主、まるで儲からず」 住…
「はっ!」 目が覚めた。自分の声に驚く。「おいおい、大丈夫か?」 高田は心配そうに横目で僕を見た。 僕は車の助手席に乗っていた。高速道路の単調な景色のせいか、いつの間にか眠ってしまって、嫌な夢を見た。「大丈夫か? うなされてたぞ」 ハンドルを握…
由奈は死んでいない、と男は言った。つまり、おまえの返答次第では殺す、という意味だ。ピクリとも動かない由奈は死んでいるのか生きているのか分からない。僕は由奈を巻き込んでしまったことを、今更ながら後悔した。過去に戻ったとき、もうすこし慎重に行…
僕と由奈はいつものように、御徒町の屋台でビールを飲みなが食事をして、僕たちはアパートの前のドラッグストアに寄った。由奈があれでは嫌だというので、新しいコンドームを買う。 店を一歩出たとき由奈が、「あ、買うの忘れた。先帰ってて」 店の中に戻っ…
昼休みに由奈と昨日の話をしようとしたら、山沖先輩も一緒に来るという。断るわけにもいかないので、三人で定食屋に入った。今日のお薦めは鯖味噌。三人とも鯖味噌を注文した。鯖が美味しい季節になってきた。こうやって、自然は一年、コロナなど関係なく過…
コロナ過ということもあり、二次会は設定しなかった。この時代の僕と理恵は明日からの旅行の準備に取りかかる。国外は無理だったので、国内旅行。結局、僕たちは一度も海外へは行かなかった。 高田は友人達と飲みに行くという。そういう約束になっていたよう…
ファンファーレが鳴り響く。灯りが落とされて、開場の入り口にスポットライトとが向けられる。ゆっくりと扉が開き、僕と理恵が腕を組んで入ってきた。僕は幸せそうな顔をしていた。自分の結婚式を生で見られるなんて、普通じゃ考えられないこと。いま裕二の…
マイザーによる治験データの改ざんが行われている。製薬メーカーは2009-2014の間に130億ドルの罰金を支払っているが、問題は何も解決されていない。今回もその繰り返し。いや、今回罰金を支払うのは製薬会社の悪を野放しにしてきた人類そのものだろう。 ある…
昨日の夜、アフターワクチン更新しているので、そっちもご覧下さい! トラックボールマウスの電池を、超高かったアルカリ電池に入れ替えた。 エヴォルタ、ネオ! いままで、275日、243日と電池が切れてきた。カタログでは273日もつことになっている。 わたし…
「意識と体を分離?」 僕は首をかしげる。そんなこと、俄には信じられない。 高田は念を押すように言葉を並べていく。「意識や記憶を、体から分離させて飛ばすことが出来るんだ。理論的には。分かりやすく言うと、モバイルAからシムと記憶メモリーを取りだし…
「冗談だろ? そんなのあるわけない」「でも、記憶のエラーだっていう確証もないんだぜ」「おまえ、科学者だろ? 本当に信じてるのか、前世とか」「科学者はあらゆる可能性を排除しない。あり得ない、とか頭から否定するのは素人だ。もちろん、前世の記憶が…
六時ぴったりに、高田は来た。髪が肩に届くほど伸びていた。ただ、五年前と顔つきはほとんど変わっていない。少しやせたくらいだろうか。「これ、土産」 渡されたのはワインだった。三本揃った。今日はとことん酔えそうだった。「高田君、久しぶり、上がって…
寺には午前中に行った。駅から寺まで、僕は理恵の手を握りながら歩いた。特に意味はないのだけれど、なぜか手を繋いで歩きたいと思った。理恵もいやがることなく、僕の手を握り返してくれる。爽やかな、秋の一日。 ここのところ、日増しにワクチン副反応によ…