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小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

アフターワクチン 第16回 その5 第17回 その1

アフターワクチン 第16回 その5

「黙っていたけど、おれは2021年に、2031年から来たおまえと会ってるんだ」
 高田は不思議なことを言う。僕はその言葉をどう受け止めたらいいか分からなかった。しかし、頭のどこかで、そのことを納得しているもう一人の自分がいた。もう一人の自分は、先ほど見た夢の自分、デジャブを感じた自分と通じるところがあるように思える。
「じゃ、さっき高橋さんが言っていたことは……」
「当たってるんだよ。高橋さんは裕二の体に入ったおまえと付き合っていた。でも、そのことを彼女は知るべきじゃない。この時代のおまえも知るべきじゃない」
 もうなにがどうなっているのか分からない。高橋さんは僕と付き合っていた?
 高田は続ける。
「だから、おれは裕二が死んだとき、あの場所にいた。おれは、裕二の体に入ったおまえに会いに行ったんだ」
「裕二の体に入った僕?」
「ああ。おまえの結婚式の日に、裕二はおれしか知らない合い言葉を言って、『自分は裕二じゃない、達也だ』とはっきり言った」
 まるで荒唐無稽。そもそも、ぼくがどうやって過去の裕二の体に入るのだというのだ。
「そんな戯れ言、誰が信じるかよ」
「今日陽が西から昇った」
 高田が呟いた言葉は意味不明な言葉なのに、頭の奥へと響いてくる。
 裕二は結婚式でその言葉を言ったという。高田は意識を転送する研究を行っていた。それは、未来から過去へ転送される可能性も秘めていた。だから、未来から過去へ転送されたことが分かるように、今日陽が西から昇った。という合い言葉を作った。この言葉は紙に書くこともなく、高田の頭の中にだけ存在する言葉だった。その言葉を2021年の裕二が高田に告げた。
 説明を終え、
「まだ信じられないか?」
 僕は激しい既視感を再び覚えた。まるで、現実の僕が宙に浮いているような、現実が虚構で既視感が現実であるような。
 高田の言葉に説得力を持たせているのは、僕が手にしている裕二のノート。そこに、紛れもない僕の字が書かれていること。もちろん、こんなところに、こんなことを画いた覚えはない。
「高田、おまえはどうしてそんなこと知ってるんだ? 僕がどうやって過去の裕二の体に入ったか、知ってるのか?」
 百パーセント知ってるわけではないが、と高田は断り、
「たぶんこれだ」
 と小瓶をジャケットの内ポケットから取りだした。
 小瓶を受け取る。小さなスクリューキャップがついている。中は液体が入っている。その瓶を受け取って僕は笑ってしまった。なぜ笑ってしまったのかは分からない。こんなもので、過去にいけるものか、と笑ったのか。それとも、ある種の懐かしさを感じて笑ったのか。
「飲めばいいんだよな?」
 と僕は聞いた。この液体は飲まなければいけない、とリアルの自分が警告しているようだった。
「やっぱり、思い出したのか?」
「いや全然。でも、僕は今、今を生きているように思えないんだよ。もう一人の自分を、すごく身近に感じる」
「じゃ、彼女の願い、叶えてやれよ」
 僕は由奈に未来を託された。
 由奈……。高橋さんのことを由奈だと思ったのも初めてで、僕はまた笑ってしまった。

 

 

アフターワクチン 第17回 その1

 

 高田の薬を飲み干すと、激しい痛みが頭と胸を襲った。そして、僕はドラッグストアーののっぺりとした床に頬をくっつけて倒れている。記憶が怒濤のように押し寄せる。今回が三回目のタイムスリップ。
 由奈が買い物カゴを放り投げて、駆け寄ってくる。
 すぐに、頭と体はリンクして、動けるようになるはず。指先から徐々に神経が蘇ってくる。
「ちょっと、大丈夫っ!?」
 由奈が僕を揺する。
 脳と体がリンクして、手足が動くようになる。僕はゆっくり立ち上がる。
「大丈夫。ちょっと躓いた」
「そういう倒れ方じゃなかったよ」
 このやりとりを覚えていた。これはデジャブじゃない。過去に実際、経験したこと。
 過去に戻ってくれば、これまでの記憶が蘇るが、未来にいるとき、過去の記憶は分厚い氷が覆い被さるようにして、その輪郭が仄かに分かるだけだ。
「救急車とか呼ぶ?」
「由奈、ちょっと説明している暇ないんだ。とにかく、逃げろ」
「なにそれ」
 僕は包丁を三本買う。
「ねぇ、なんで包丁なんか買うの?」
 その質問には答えずに、会計を済ませる。店を出たところで、
「たぶん信じられないだろうけど、さっき未来から戻ってきた。僕の部屋にはあのガルシアがいる。僕も連絡するが、君からも警察に連絡を」
 このふざけた歴史を終わらせて、このループも終わらせる。
 僕は逮捕されて有罪になるだろうが、ここでガルシアを殺せば、その話題は全世界を駆け巡る。
「ねぇ、お願い、分かるように説明して!」
 僕は逡巡して、
「無理だよ。でも、僕がこれを成功させれば、世界を救うことが出来るかも知れない」
 僕は由奈の目の前で警察に電話をかける。由奈は寂しそうな目をして、僕のもとを離れていった。これでいいんだ。

2031年

 僕は小瓶の液体を飲み干した。

2021年

 あのボディガードをまず倒さなければ、ガルシアには到達しない。

2031年

2021年

 また失敗した。ここでガルシアを殺すのは無理なのだろうか。

2031年

 相手の動きが分かる。あと少し!

2021年

2031年
2021年
……
……

 

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こっちにアップするのを忘れていた(T-T)

たぶん、ツイッターよりもこっちの方が読まれている。

今日も今から書く。クライマックスだ。

わたしは大体300枚くらいの小説は一ヶ月で書く。一ヶ月かからない。

アフターワクチンはもうかれこれ3ヶ月? 結構長い間この小説と関わってきている。終わってしまうのが寂しい。しかし、一度書き始めたものは結末まで書く、というのをこれまで自分に課してきた。

さて、達也は世界を救えるか!?

小説の中でワクチン被害から世界を救っても、現実のワクチン被害が半端ない。カナダでは新生児が死にまくりだとか。

新しい変異株は怖くも何ともないが、新しいワクチンには恐怖しか感じない。