文学・文具・文化 趣味に死す!

小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

アフターワクチン 第14回 その3

 

 コロナ過ということもあり、二次会は設定しなかった。この時代の僕と理恵は明日からの旅行の準備に取りかかる。国外は無理だったので、国内旅行。結局、僕たちは一度も海外へは行かなかった。
 高田は友人達と飲みに行くという。そういう約束になっていたようだ。差違際、手短に彼は言った。
風が吹けば桶屋が儲かる。時間の改変はどんな些細なことでも、将来なにが起きるか分からない。このことは誰にも言うな。おまえが未来から来たことを知られないようにしろ」
「なんで?」
「おれがそんな技術を造ったということは、未来から現在に来ているのはおまえだけじゃないかもしれない、ってこと」
 地球以外に生命体いないと考えるのが非合理なように、未来から来た人間が自分だけというのも非合理だ。もし、僕よりも先にこの時代に来ている人間がいたら、その人間は必ず高田を観察しているはずだし、高田と接触する人間を観察するはずだ。
 ただ、僕はもうツイッターなどに未来の話しを書き込んでしまった。この時代の人間があれを見ても荒唐無稽だと思うだけだけれども、未来から来た人間が見たら、一発でなんのことか分かってしまう。それを考えるとゾッとした。だけど、逆に未来の知識がある僕は、この時代に存在する未来人を見つけることだって出来るのではないだろうか。僕と同じようにツイッターなどに書き込みをしていないだろうか。
 いや、僕が最初にそうしたのは、偶然に過去に戻ったからだ。今回のように、明確な意志のもと過去に戻ったのなら、そんな軽率なことはしないだろう。
 今日のデモは特に何ごともなく、無事に終わりました。
 届いた由奈からのラインにはそう書かれていた。
 僕は一度死んで、再び未来から来たこと、高田と会ったこと。そんなことを返信に書いていたら、やたらに長文になってしまった。それに、こんなことはラインで告げるものじゃない。データとして残すのもよくない。その文面を消去して、手短な返信をしようとしたが、電車を乗り換えたり、晩ご飯を食べているうちに返信するのを忘れてしまった。
「おはよう、裕二。昨日の結婚式、どうだった?」
 月曜日、由奈はいつものように声をかけてきた。
「ああ、おはよう」
「昨日わたしのライン無視したでしょ?」
「あ、ごめん、返信忘れてた」
「なんかあった? 結婚式。あったんでしょ。見れば分かるよ。なんかいつもと違うもん」
 見抜かれて、僕は肩の力が抜けた。
「さすが彼女なだけあるなぁ」
「で、なにがあったの?」
「昼飯の時にでも話す」
 僕はその後も浮かない感じで仕事をしたものだから、部長から小言を食らってしまった。

 

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ツイッターにアップして、こっちにアップするのを忘れていた。

今日はダブルアップだ!