文学・文具・文化 趣味に死す!

小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

アフターワクチン 第13回 その6

 

「冗談だろ? そんなのあるわけない」
「でも、記憶のエラーだっていう確証もないんだぜ」
「おまえ、科学者だろ? 本当に信じてるのか、前世とか」
「科学者はあらゆる可能性を排除しない。あり得ない、とか頭から否定するのは素人だ。もちろん、前世の記憶が残っているという確証もないがな」
 高田は楽しそうにワインを傾けた。
 時計は日付をまたいでいた。理恵がうとうとし始めた。
「理恵、寝てくれば?」
「……うん。男だけの話もあるでしょ。わたしは落ちます。おやすみ」
 眠そうな目を開いて、理恵は寝室に下がった。
 高田のグラスにワインを注ぐと、ボトルが空になった。新しいボトルを開ける。
「そうだ。一つ気になってた。どうして僕の番号、知ってたんだ?」
「知ってるもなにも、おまえ前から変えてないだろうが」
 だったら、
「なんでもっと早くかけてこないんだよ」
「いろいろ迷惑かかると嫌だったからな。ほら、おれは非接種の嫌われ者だ」
 高田は自嘲する。
「で、おれが死ぬ前に一度会っておこう、ってことか。旧友に会えるなら、死ぬのも悪いことばかりじゃないな」
 僕の冗談に、高田は困ったような表情を浮かべた。そして、ある決断をするように口を開く。
「達也、論理的じゃないな。どうして、おれがおまえの寿命を知っていると思った?」
 不意に酔いが醒めた。高田が僕の寿命を知るすべがあったのだろうか?
「なんで?」
「実は理恵ちゃんと一年ほど前にばったり会ったんだよ。その時、番号を交換した。おれはおまえに会うつもりはなかった。理恵ちゃんから連絡が来ることもなかった。でも、一週間くらい前だったかな。理恵ちゃんから連絡がきて、おまえがもうすぐ死ぬことと、あと、おまえにデジャブがよく起きる、という話しを聞いた。それで、ひょっとしたら、と思った」
 高田はポケットから高さ五センチほどの小瓶を取りだし、机の上に置いた。中には液体が入っているようで、夜の光に揺らいでいた。
「なんだよ、それ」
「おれの研究だ」
 つまらないおもちゃであるかのように吐き捨てる。
「ワクチンならお断りだぜ」
「ワクチンじゃない。飲み薬だ」
「飲むとどうなる?」
「おれは一晩苦しんで翌朝目が覚めた」
「副反応か?」
「残念なことに主作用がなにも認められなかったが」
「なんの薬だよ、それ」
 高田はあごを撫でながら、
「これは、人間の意識を体と分離させることが出来る」

 

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昨日は文章は出来ていたのだが、夜帰ってきて疲れてアップ出来なかった。今アップする。今日はなぜか四時半に目が覚めて眠れず。珈琲が切れて飲んでないからなか。

今日こそ珈琲を買いに行かねば。

1984に出てくる珈琲はメチャクチャ美味そうだw