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小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

アフターワクチン 第11回 その2

 

 靖国通りから一本入ったところにある肉バルにした。
 緊急事態宣言が終わり客足が戻ったものと思っていたら、店内は僕たちともう一組しかいなかった。席ごとにカーテンで仕切られ、アクリル板が乱立していて、あまりいい気分はしない。僕はアクリル板を横にどかした。
 マスクとアクリル板が消えない限り、店に客は戻らないのではなかろうか。マスクを付けたり外したりしながらする食事は鬱陶しいことこの上ない。堂々とみなが外せばいいのに、誰か一人付けていると、気を遣ってしまうのかも知れない。
 肉料理がつぎつぎ運ばれてくる。僕は結構肉好きであるが、弟はそんなに肉が好きではなかったかも知れない。チーズや肉を摘まみつつ、ワインを飲む。悪くない。
「なんか、二人でこうしてると、面接みたいだね」
 理恵が唐突に言った。
「面接?」
「わたしが裕二君の義姉に相応しいかどうかの面接」
「なるほど。面接だ。厳しくチェックしなきゃ」
「うわ、緊張してきたよ」
「大丈夫。合格しました」
「早っ、なにそれ」
 と理恵は笑った。
「それでは、合格お祝いを進呈します。兄貴にも渡しといてもらっていいですか」
 僕は裕二が過去の僕のために買った時計と、十年後理恵に渡そうとしたネックレスを、目の前の理恵に渡した。
「え、ちょっと、悪いよ。達也のはともかく、わたしがもらっちゃったら」
「お義姉さん、遠慮しないで」
 理恵は僕のプレゼントを取り出し、
「え、だって、これダイヤモンド」
「結婚十周年と被っちゃうかも知れないけど、その時は兄貴になんか別なもの、もらってください」
 理恵はプレゼントを包み直して鞄にしまう。
「ありがとう。なんか気を遣わせちゃって」
「気なんか遣ってない。二人には幸せになってもらいたい。いや、絶対幸せになるんです。おれが保証します」
 なんか、裕二君、キャラ違くない? 理恵はくすくすと目を細める。
 その通り。僕は裕二じゃない。これから十年間、君を愛した達也だ。そのことが告げられないのが悔しい。
「その新聞、昨日のデモ?」
 と僕の開けたままになっている鞄の中身を、理恵が指さす。
「あ、はい。そう」
 僕は三紙とも取りだして机の上に並べた。
「ニュースだと、非正規、若者達の暴動だって書いてあったけど、SNSとか見るとワクチン反対のデモだったみたいだね」
「どうしても反ワクチンは報道したくないらしいです」
「ねぇ、裕二君。ワクチン打った?」
 聞きにくそうに、遠慮がちに理恵は言った。
「いえ、あまり気が進まなくて、打ってないです」
 ぱっと彼女は顔を輝かせた。
「やっぱり。だよねっ。わたしもあれ、なんか怪しいと思ってるんだよね。人には言えないけどさ」

 

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Amazonプライムは倍速再生とかができない。しかし、クロームプラグインで出来ると知り、さっそく入れた。サクッと一時間でサンダーボール作戦を観てしまった。

 

こういう観方は邪道だと前に記事になっていたが、時間がないのでしょうがない。プライムの007無料もすぐ終わるだろうし。ちょっとこの観方であと何本か観てみる予定。