なぜ人間には性欲があるのか。
諸賢はダーウィンの進化論に従って以下のように習ってはいないだろうか。
性欲がない人間もいたが、性欲が強い人間ほどよく繁殖した。性欲が弱い人間はあまり繁殖せず淘汰された。故に性欲の強い人間の子孫である我々には性欲が備わっている。
性欲に関してはおそらくその通りかも知れない。
しかし、甘いものに関してはどうだろうか? 諸賢は以下のように習わなかっただろうか?
甘いものは高カロリーである。高カロリーを率先して接種した人間ほどよく繁殖した。故にその子孫である我々は甘いものを好む。
実に最もらしい話ではないか。この理屈は甘いものを食べてしまう免罪符としても機能する。
だが、もし、砂糖が麻薬と同じ中毒性のある物質だとしたら、果たしてこの理屈はなり立つのだろうか?
実は白砂糖は麻薬と同じ製造工程で作られ、麻薬と同じメカニズムで脳に快楽信号を送り、麻薬と同じく接種をやめると禁断症状が発現する。マイルドドラッグと呼ばれる代物なのだ。
ここのところ歯痛が非道くて砂糖断ちを行っている。普段は二三日で治る歯痛が、一週間経っても治らない。最初は禁断症状が現れ、甘いものが食べたくなった。しかし、歯が痛いので食べられない。そして、二週間ほど経ってみると、あらふしぎ、甘いものを欲しなくなったではないか。つまり、中毒から抜け出せたのだ。
つまり、私は甘いものを好んだ人類の子孫であるから甘いものを欲していたのではない。ただ単に、砂糖中毒なだけだったのである。
たとえば、こんなことを言う人間がいたら、どう思うだろうか。
「麻薬は高快楽である。高快楽を率先して味わった人間ほどよく繁殖した。故にその子孫である我々は麻薬を好むのである」
嗚呼、麻薬で頭が逝っちゃってるんだろうな、と思うだろう。
だが、その内容は、
「甘いものは高カロリーである。高カロリーを率先して接種した人間ほどよく繁殖した。故にその子孫である我々は甘いものを好む」
と同じなのだ。
諸賢、食品業界の陰謀に嵌まることなかれ。嘘だと思ったら二週間ほど砂糖断ちをしてみるがよい。今までの甘いもの接種が嘘のように感じるはずだ。というか、気持ち悪くて甘いものが食えなくなる。
おそらくアニマルフードにもこの原理がはたらいているのだと思う。私はいま肉断ちに挑戦しようかと考えている。ただ、弁当や会食があるので、なかなかヴィーガンのような食生活は難しい。