明日が芥川賞の選考会なので、どうにかギリギリ5作品読破。
まとめは今晩にでも書こうと思う。
久しぶりに読めない作品を読んだ。
おそらく、意図的に読みにくい表現にしていると思われる。
読みにくい理由は以下の通りだ。
舞台が外国
絵画及びキリスト教的教養が必須
登場人物が多数
登場人物の半分が外国人で横文字
時間軸がころころ変わる
難解な文体
苦労して最後まで読んだ。あらすじはお盆に3.11で死んだ友人が主人公のいるゲッティンゲンに現れる、というお話。
お盆に死者が帰ってくるのは日本では当たり前だが、外国に来てしまう、というのがちょっと面白い。また、3.11で波に掠われ遺体が上がらない友人なので、9年前と顔が変わらない。
私の読み方では、3.11という悲劇と、第二次世界大戦の悲劇を重ねているように感じた。だが、その2つは全く別物ではなかろうか。そのあまりに野心的なところに無理が生じてはいないか。
この作品はひょっとしたら内容を味わうものではないのかも知れない。書かれた文章、表現、言い回し、文字面、それこそがメインであり、内容は特に意味がないのかも知れない。そう考えると、辻褄が合う。そう思わせるくらい難解なのだ。
群像新人賞受賞作品で、群像2021年6月号に収録されている。併せて、選考委員の講評も収録されている。
この作品を理解できないのは、私が読み切れないだけで、ちゃんとした読み方があるのではなかろうか、と選考委員の講評も読んでみたが、やっぱりわからなかった。
選考委員の講評は二極化だった。一部を抜粋する。
まず肯定的な講評の島田氏は
「人文的教養に溢れる大人の傑作。描写を割愛して会話に叙述を溶かし込む今時のライトなスタイルに逆行し、風景や人物、事物のオーラを掘り起こす作業に作者は徹底奉仕している」
松浦氏は否定的な好評だった。
「旧時代的な文学のイメージにもたれかかりつつ、知性と教養で集めた様々な道具の並ぶ厚塗りの絵を提示することで何か重々しいものを表現し、また何ごとかを糊塗し得たつもりになっているのではないか」
難解な小説がどういうものか、挑戦したい方にはお薦めな作品だ。ただ、普通に小説を消費しようなどの考えで手を出すと痛い目に合う。
芥川賞予想だが、島田氏が芥川賞の選考委員なので、この作品を推さないわけがない。そう考えると、一歩リードしている。他がドングリの背比べ、な感じなので、受賞の確立は高いと思う。
詳しくはまとめで書こうと思うが、私は今回、受賞作無し、のような気がしてならない。