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第164回 芥川賞候補作 コンジュジ を読んだ

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コンジュジ (集英社文芸単行本)

コンジュジ (集英社文芸単行本)

 

 

 

コンジュジとはポルトガル語で配偶者という意味らしい。

 

謎なタイトルである。

 

この作品も普通に面白かった。特に気に入ったのは外国人バンド、カップスのインタビュー記事。外人アーティストのしゃべり口調が絶妙なのだ。

 

わたしもその昔ロックにハマっており、プレーヤーとかギターマガジンなどを読んでいたので、外人アーティスト特有の言い回しが溜まらなく懐かしい。

 

しかも、この作品ではその独特な口調を、さらに誇張して書いている。それだけで、お腹いっぱいな作品だった。

 

作品は単純なのだが、こういう複層的というのだろうか、劇中劇のようなところがあり、さらに、それが本線と混ざるという、ちょっと複雑なところがある。人によっては拒絶反応が出かねない。

 

 

ネタバレ注意!

 

 

主人公は小学生の女の子。母親が出て行き、父親に育てられる。主人公は昔自殺したロックバンドのボーカルに恋をする。ボーカルは死んでいないので、空想の中でボーカルと会話をする。

 

しかし、父親から性的虐待などを受け、だんだん、ボーカルとの空想の恋が現実と見分けのつかないものになる。

 

そして、妄想のボーカルとともに同棲を始める……

 

という、あらすじだけで面白そうである。

 

おそらく作者は相当の洋楽ファンなのだと思う。海外アーティストのしゃべり口を会得している。現実の悲惨さと、空想の突拍子のなさが、この作品に生彩を加えている。

 

この作品は十分受賞に値すると思うが、あえて気になるところを述べると、父親があまりにも救いがない。

 

ボーカルのリアンでさえ、過去に父親から虐待を受けて云々、とあるが、主人公の父親はしゃべり口調からなにまで、救いがないほどアホに描かれている。ただ、父親にも同情の余地を与えるような書き方をすると、実娘に対する性的虐待を正当化するのか的な批判を受けかねない。難しいところである。

 

さて、のこり二作品なのであるが、貸し出し中で手に入らない。

 

 

1月19日追記

 

全体の総評&受賞予想はこちら!

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