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死者の奢り 大江健三郎 を読んだ 感想 レビュー

 

死者の奢り・飼育(新潮文庫)

死者の奢り・飼育(新潮文庫)

 

 

一読して非常に村上春樹に似ていると思った。それは、主人公がどこか虚無的なところ。

 

女が、独自の論理を持っているところ。

 

死者達がプールに浸かっているという非日常な空間。

 

村上作品が好きな人は、この作品も気に入ると思う。

 

とはいえ、大江の方が先なので、村上こそが大江に似ているのだろう。

 

 

ネタバレ注意!

 

 

たとえば、主人公が虚無的と指摘されるくだりはこんな感じだ。

 

主人公は「希望を持っていない」という。ならば、どうしてこんな競争率の高い大学に在籍しているのだ、と問われて、

 

「希望を持つ必要がないんだ。僕はきちんとした生活をして、よく勉強しようと思っている。そして毎日なんとか充実してやっていけるんだ。僕は怠ける方じゃないし、学校の勉強をきちんとやれば時間もつぶれるしね。僕は毎日、睡眠不足でふらふらしているけれど勉強はよくするんだ。ところが、その生活には希望がいらない。僕は子どもの時の他は希望を持って生きた事がないし、その必要もなかったんだ」

 

そして、この死体運びの仕事は、実は死体を移すのではなく、破棄するという業務だった。だから、死体を移した主人公達の仕事は意味がなかった。そこで、主人公は給金の心配を始める。さらに、死体を破棄する業務まで加わるので割り増しがもらえるかどうかも気にし始める。

 

小編であるが、ストーリーも人物も実によく出来ている作品だと思った。