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背高泡立草 古川真人 を読んだ 芥川賞候補作品 感想 レビュー

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無事残りの2冊も借りられた。

芥川賞候補作品がこんなにサクッと借りられてしまう。芥川賞の世間からの注目度が下がっていることを痛感せずにはいられない。

 

ただ、ここまで芥川賞作品や候補作品を読み進めてくると、それはなんとも仕方が無いようにも思えてしまう。

 

よく、芥川賞作品はつまらない、と言う人がいる。わたしはそう言う人に、芥川賞候補作品を読んだことがあるか、と聞きたい。そもそも、半年に1回、というのは多すぎる。根本的に球数が足りてない。

 

 

 

背高泡立草

背高泡立草

 

 

すばる 2019年 10 月号

すばる 2019年 10 月号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: 雑誌
 

 

わたしはすばるの方で読んだ。

 

さて、古川氏は前回に続いてのノミネートだ。作風が前回と同じ感じなので馴染みがある。前回と違うところは、「家」を起点に過去の物語が展開されるところ。しかし、過去の物語りは過去の物語として独立しており、カヌーぐらいしか現在とはつながらないし、つながったところで、話の本筋とは関係ない。

 

話の本筋、と書いたが、氏の作品は話の本筋なるものがまず存在しない。おそらく、ある家族を描くという感じなのだ。だから、この作品に出てくる家族も、前回のノミネート作品「ラッコの家」に出てくる家族と雰囲気が似ている。

 

ラッコの家 古川真人 感想 レビュー 第161回芥川賞候補作 - 文学・文具・文化 趣味に死す!

 

前回は方言を好意的に捕らえたわけであるが、今回はもういささか方言にも飽きてきた。方言は方言で面白い試みのひとつだと思うのであるが、方言だけで乗り切ろうという作品はいささか無理がある。

 

とくに、今回は前回と違い、過去の物語りが挟まれているので、余計に方言のリズムに乗りにくいのだ。

 

正直、作品の意味するところや、訴えたいこと(そういうものがあるのだとして)はわたしにはわからない。しかし、この作者がどうして芥川賞にノミネートされるのかわかる。この作者の作品は独特なのだ。

 

小説なんか誰でも書ける、というのは嘘である。10枚20枚の短編なら誰でも書けるかもしれない。しかし、300枚の作品は誰でも書けるわけではないのだ。小説を書いたことがあるひとなら分かると思うが、先に進まなくなるのだ。

 

書き進めていくうちに、作品は壁にぶつかり進まなくなる。普通の人はそこで筆を投げてしまう。

 

しかし、この作者は違う。あたかもそこにある壁が妄想の壁であるかのごとく、するりと通り抜けて作品を綴り続けるのだ。

 

そして、面白いか面白くないかはさておき、ひとつの作品に纏めてしまう。

 

ならこの作品が受賞かと問われれば、これも受賞は難しいと思う。

 

 

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