わたしは文學界の方で読んだ。
恐ろしく美しい文章で恐ろしく中身のない話しだった。
純文学に中身を求めるのも無粋であるが、この作品はあえて文章のみに焦点を置いたきらいがある。というのも、父親の話し方まで名文調で滑稽なのである。
また随所に繰り出される音楽ネタが痛い。雰囲気は出ているので、おそらく、悪のりで連発している。
「姉と妹が異名同音調のように似ている」
とは、最早双子ではないか。せいぜい平行調か同名調、もしくは近親調なのではないか?
またずいぶんマイナーな作曲家を出してきたねぇ。
などと、わたしも音楽については一家言あるのでいろいろ突っ込みながら読んでいた。
本作品は間違いなくつまらないのであるが、文章の凄まじい牽引力で最後まで読まずにはいられなかった。もちろん、読み終えたときの感想は、「文章上手いなぁ」である。
そして、冒頭のシーンは最後まで謎であった。
現在読了した2作品の中では、こちらのほうが芥川賞に近いだろう。でもたぶん無理。