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仁志野町の泥棒 を読んだ

 

鍵のない夢を見る (文春文庫)

鍵のない夢を見る (文春文庫)

 

 ↑これに入っている。

 

この作品は朝顔とは逆に、最後のシーンが最初にあって書き始められたのではないのかと考える。

ネタバレをするが、小学生だった主人公は転校生と友達になる。その転校生の母親は泥棒で、クラスメートの家などに手当たり次第に入って金を盗む。しかも、なんども繰り返す。

小さい町なので、警察には届けない。町中で、あの人は泥棒と言うことになる。転校生が転校を繰り返す理由も、泥棒をしすぎて住めなくなったからだ。

泥棒も普段は普通の母であり、優しい人なのだ。だからこそ、泥棒という病癖とギャッ

プが印象的。

ある日、主人公はその転校生と買い物に出かける。そのとき、小さな消しゴム一個を彼女が万引きする場面に出くわし、それをとがめる。そして、それからその転校生とは疎遠になり、卒業してしまう。

高校になったある日、ばったりその転校生と出くわすのであるが、彼女は主人公の名前を思い出せない。という話。

なぜ思い出せないのか、ここがいろいろ読みかたがあって面白い。彼女は心に蓋をしてしまったのか、それとも、万引きをとがめられたのを気にしているのか。わざわざ彼女が共通の友人の名前を出すところも面白い。

現実にもいるではないか。絶対覚えているはずなのに忘れたふりをする人間が。この作品は、そんな現実にある出来事から敷衍して物語を作っていった、そんな小説なのではないだろうか。

 

 ↓これにも入っている。