↑これに入っている。
この作品は朝顔とは逆に、最後のシーンが最初にあって書き始められたのではないのかと考える。
ネタバレをするが、小学生だった主人公は転校生と友達になる。その転校生の母親は泥棒で、クラスメートの家などに手当たり次第に入って金を盗む。しかも、なんども繰り返す。
小さい町なので、警察には届けない。町中で、あの人は泥棒と言うことになる。転校生が転校を繰り返す理由も、泥棒をしすぎて住めなくなったからだ。
泥棒も普段は普通の母であり、優しい人なのだ。だからこそ、泥棒という病癖とギャッ
プが印象的。
ある日、主人公はその転校生と買い物に出かける。そのとき、小さな消しゴム一個を彼女が万引きする場面に出くわし、それをとがめる。そして、それからその転校生とは疎遠になり、卒業してしまう。
高校になったある日、ばったりその転校生と出くわすのであるが、彼女は主人公の名前を思い出せない。という話。
なぜ思い出せないのか、ここがいろいろ読みかたがあって面白い。彼女は心に蓋をしてしまったのか、それとも、万引きをとがめられたのを気にしているのか。わざわざ彼女が共通の友人の名前を出すところも面白い。
現実にもいるではないか。絶対覚えているはずなのに忘れたふりをする人間が。この作品は、そんな現実にある出来事から敷衍して物語を作っていった、そんな小説なのではないだろうか。
↓これにも入っている。

日本文学100年の名作第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)
- 作者: 池内紀,松田哲夫,川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/05/28
- メディア: 文庫
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