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第168回 芥川賞 候補作 安堂ホセ(28)「ジャクソンひとり」(文芸冬号)を読んだ 感想 レビュー

 

 

どうにか候補作、全作品を読んだ。発表は19日だからギリギリである。受賞作予想は明日する。

 

本作品は日本に暮らす黒人ゲイの話。

 

文体が特徴で、三人称多視点なのだろうか、なかなか読みにくい。さらに、そっくりな登場人物四人が会話するので、誰が誰やら。わからなくてもOKってことかも知れないけれど、わかりやすい現代文学に慣れ親しんだ読者は読みにくいと感じるのではないだろうか。

 

 

ネタバレ注意

 

 

ジャクソンは日本で地味な差別にあっている。一本のビデオが元になって、そっくりな四人が集まる。その四人は入れ替わったりして、嫌いな奴らに復讐を始める。

 

というあらすじなのだが、入れ替わり復讐がメインなのか、ゲイがメインなのか、差別がメインなのか、それともそれらすべてが合わさった所に作品の魅力があるのか、正直よくわからなかった。

 

台詞のやりとりとかは魅力的で、読ませるパワーはある。ただ、話に一貫性がないというか、物語の主軸がどこなのか、よくわからない。今回の芥川賞候補作のなかで最も難解な作品ではないだろうか。

 

その訳のわからなさ加減が文学だと言ってしまえばその通りなのかも知れないけれど、果たして本作が文学的かと問われるとそんなこともないような気がする。

 

入れ替わって嫌な奴をチャリンコで轢くとか、ネタがよくわからないのだ。最後のイベント会場の殺人も、そこにいる子ども達も、唐突感が否めない。

 

ある意味ハチャメチャな作品ではあるが、読んで損したとは思わない。たまにはこういう作品も面白いと思う。