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第167回 芥川賞候補作 N/A 年森 瑛

 

 

 

N/Aとはnot applicable、該当なしの略語らしいが、その意味で合っているのだろうか? わたしは読了して検索するまで自然吸気エンジンだと思っていた。なぜなら、それ以外思い当たらなかったし、主人公にはターボのようなものがついてないから。

 

LGBTの話。文學界新人賞全会一致で受賞とのこと。今に始まった事ではないが、特に最近はLGBTネタの小説が多い気がする。主人公は女子高生なのである。しかし、文學界の読者に女子高生がどのくらいいるのだろうか。審査員が女子高生をどれほど理解しているのだろうか。読者も審査員もそしてわたしも所謂記号としての女子高生を消費しているような気がして、どうも作品に没頭できないのだ。

 


主人公は拒食症とのことであるが、食うときはよく食うのである。またパートナーにSNSでわからないように載せられているにもかかわらず、急に取り乱す。普段は哲学者のようにハスに構えているのに。キャラクターの一貫性に疑念を感じた。

 


また、その他の登場人物たちも小説の筋書きのために生まれてきたものばかりに見える。エンタメ作品であればさして気にもならないのだろうが、純文である。そういうところも入り込めない一つ。

 


審査員ベタ褒めの作品であるが、これで芥川賞を逃して、審査員にボロクソ書かれたら、純文学の価値基準に多義的な尺度が加わることにならないだろうか。まだ他の候補作を一つも読んでいないので断言はできないが、おそらくそうなると思う。