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第168回 芥川賞 候補作 鈴木涼美(39)「グレイスレス」(文学界11月号)

 

 

AV女優の化粧師が主人公の話。

今回の候補作の中では今のところ一番面白かった。

 

著者自身が元AV女優ということだけあってか、AVの撮影シーンだけはリアルで面白い。ただ、これが需要があるかと問われれば微妙である。

 

逆に、AV以外のシーンは、文学的な雰囲気を出そうとの努力が滲んでいて引く。母と父と祖母の設定がちょっとラノベっぽくはないだろうか。

 

主人公も、THE純文でありんす、といった感じで鼻につく。

 

本作の、この世界でなにをして良いのか分からない感、というのは作品としての見所のひとつだと思う。

 

AV女優にしろ、主人公の化粧師にしろ、母親にしろ父親にしろ祖母にしろ、この世界でなにをしていいのか迷っている。その雰囲気は実に良く伝わってくる。

 

今回の候補作は、みんなそんな感じ。ただ、絵的には本作が一番面白いと思った。