文學界新人賞受賞作である。
これは文句なしで受賞したことだろう。久しぶりに圧倒的な出来映えの作品を読んだ。
ネタバレ有り
ハンチバックとはセムシのことである。ノートルダムのせむし男の原題はHunchback of Notre-Dameである。
主人公は重度の障害で背中が曲がっている。普通に生活が出来ない。障がい者の目線から物語は描かれている。
著者自身が障がい者のようで、非常にリアルに描かれている。小道具や所作だけでなく、内面がリアルに描かれている。
リアルというのは、我々が障がい者に抱く弱々しく、または清らかな幻想などではなく、障害ゆえに屈折した感情や衝動である。
具体的には主人公は妊娠して堕胎することを望む。肉体的に出産は無理でも妊娠と堕胎なら可能だということ。
妊娠するためにヘルパーさんに億単位の金を払ったり、結構突拍子もないことをする。
そしてまた文章がいい。狂った小説なのであるが、文章が綺麗で、ユーモラスで、読んでいて不快になることがない。
最後の章が不明瞭だが、わたしはこの部分も良いと思う。物語の循環性を考えると、この終わり方、まとめ方はありだと思う。小説の内容だけを問題としたとき、確かに最後の部分は意味不明であるが、小説を構築物として見るならば、上手くバランスが取れているし、後味としても悪くない。
一体どうやってまとめるのだろうと途中まで読んで気になっていたが、上手いことまとめたと思う。
単行本はまだ発売されていないらしい。
今回の芥川賞にノミネートされるだろうし、おそらく受賞するのではないだろうか? 他の候補作を読んでいないので分からないけれど。