3.11ものである。ちょうど十年なのでタイミング的にはいいかも知れない。震災を忘れない、というテーマはよく届いた。
3.11ものというと、どうしても美しい顔を思い出してしまう。ぶっちゃけ美しい顔に似ている。
震災を忘れない、というテーマの他のに、もう一つ、「震災被災者とその紙一重の所にいた人間はいかに震災と向き合うべきか」というテーマで語られている。
面白い視点だと思った。震災被災者としての視点でもなく、震災から離れた人間の視点でもなく、震災を直に食らった人間が回りにたくさんいるのに、自分は無傷だという視点。
罪などあろうはずはないのに、無傷だということだけで罪悪感を背負い込んでしまう。
そういう感覚は戦争の時もあったらしい。戦争文学にはよく出てくる。なぜあいつは死んでおれは生きているのか、というテーマ。震災文学はこういうところで、戦争文学と重なる部分があるのかもしれない。
主人公は高校生の時に震災を経験し、10年、震災を引きずりながら生きる。主人公の回りも、そういう人間が多数出てくる。
もちろん、小説なので結論を出す必要はないが、中途半端な感じは否めない。というか、予定調和感が強い。
気になる部分も多い。強いトラウマを持っていた中鵜はどこに行ってしまったのだ?
あと、主人公は女性なのであるが、あまりにも小説に出てくる一人称女性主人公然としすぎている。
3.11ネタは興味深く読ませてもらったが、ちょっとパンチが弱い。どうしても美しい顔と比べてしまう。
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