第二次大戦末期の日本を描いた、しかも、呉という軍港の街を描いた話。
戦争という悲惨な現実の中にも、日々美しく日常を生きる。そんな少女の話である。
ただ、このすずという主人公を見ていて、非常に多面的であると思えた。普段のキャラはおっとりとした、ちょっと天然っぽい感じで振る舞っているが、爆弾で右手を失ってからは、かなり熱血しっかりキャラ。しかも、哲学的な思索をするという。
これを成長と呼ぶべきかどうかは疑問で、やはり、ひとりの人物の中に複数の人格が備わっていると考えた方が自然ではなかろうか。
というか、小説や映画、物語を理解するときに、その登場人物が多面的であると解釈して見た方が、心理描写なども深く読めると考える今日この頃。平野啓一郎のディビではないが。
最近学んだあれこれ メリークリスマス - 文学・文具・文化 趣味に死す!
人間は目に見える肉体がひとつなので、ひとつの人体にはひとつの人格と勝手に思い込んでいるが、実は、人格とは川の流れる水がごとく、実態などはないのではなかろうか。
このすずを観ていて、とくにそう思った。