乙巳の変から5年後の、650年から690年頃までの話だろうか。
有間皇子謀反事件、白村江の戦い、遷都、壬申の乱、などを額田は経験する。ただ経験するのではなく、時の支配者である天智、天武の三角関係にもつれながら経験するのである。
白村江の話などを天智とするシーンは一番面白かった。
ただ、歴史小説なのか、恋愛小説なのかよくわからないところがある。おそらく、その両方を狙ったのであろうか、その両方とも掴み切れていない感じがしないでもない。
ほとんど資料がない飛鳥朝の話を書くというのは、その他の時代に比べていろいろと難しいところがある。戦国時代、江戸時代、などは読者のイメージも固まっているから、それに即して書けば良いのであろうが、飛鳥時代のイメージを持っている読者はどれほどいるだろうか? 読者によって十人十色なのではないだろうか。
だから、この作品も、読む人が読めばドンピシャでハマるだろうが、また違う人が読めば、何をやっているのかさっぱり分からない、そんな感じになる恐れがある。
楊貴妃伝 井上靖 を読んだ。感想 レビュー - 文学・文具・文化 趣味に死す!
楊貴妃も美女である。額田も絶世の美女という設定。井上氏は美女を主人公にするのがお好きなようだ。
楊貴妃よりも更に前の時代を扱うという、ある意味意欲作である。楊貴妃伝に感じたようなwiki感はこの作品ではなかった。
軽いのか、重いのか、判然としない作品であった。