唐の玄宗の時代。安禄山の乱により非業の死を遂げる。絶世の美女とうたわれる楊貴妃の入内から死までを描く作品。
面白すぎる史実なので、つまらないわけがないのであるが、この作品はちょっと小説としては物足りないと感じた。
なんとなく、小説ではなくウィキペディアを読んでいるような気分になるのだ。おそらく、井上氏は史実を史実として書いているからだろうか、どうも盛り上がりが足りないというか、感情移入できないというか、登場人物に生気が感じられない。
いや、面白いのである。面白いのであるがなにかが足りない。同じ中国史ものでも、浅田次郎や吉川英治にくらべて、なにかが足りないのである。
我々が海外旅行に行って、海外の料理に味足りなさを感じる、そんななにかが足りないのである。