べつにオープンカーつながりで車輪、を選んだわけではない。
ちなみに、前回レビューした「哀愁の町に霧が降るのだ」の中でちょっと車輪の下が出てくるが、わたしはこれを読もうと思って前から所有していたので単なる偶然である。
哀愁の町に霧が降るのだ 椎名誠 を読んだ 感想 レビュー - 文学・文具・文化 趣味に死す!
さて、車輪の下はみなご存じであろう。わたしもタイトルは知っていた。しかし、中身はあらすじすら知らなかった。
あらすじは、ヘッセ自身の小中学校から20歳手前までくらいの自伝である。青春文学である。ただ、自伝と違うのは主人公のハンスは泥酔して死んでしまうのである。実に美しく物語を締めている。
タイトルの「車輪の下」これは、文中に一度だけ出てくる。
ハンスは悪友(自由な精神の持ち主)に感化されてどんどん学校の成績が悪くなる。そして、校長に呼び出しをくらう。校長はちゃんと勉強をするように言う。ハンスは首肯する。それを受けての校長の台詞。
「それじゃ結構だ。疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね」
これだけである。このほか、どこにも車輪などは出てこない。だから、このタイトルの意味を憶測すると、車輪というのは回り続ける世間のメタファーであり、その世間にハンスは踏みつぶされる、そう解釈できないこともない。
古典であるが面白い。しろばんばの印象が強かったせいか、この作品もしろばんば的な匂いがある。いや、この作品をもとにしてしろばんばが書かれたと考えた方が合理的だろうか。
なにか一冊、西欧の古典を読もうと思っている人にはお勧めである。
しろばんば 井上靖 を読んだ 感想 レビュー - 文学・文具・文化 趣味に死す!