比喩がすごい。上手い比喩から訳のわからないものまで、一ページの中に無数にちりばめられている。比喩集を読んでいる感じすらある。そんな喩えようがあったのか、としばし感服する。
例えば、
ゼラチンを透したような月明かり
胃が、ゴム手袋のように、冷たく冷えていた
男は、砂糖をなめすぎたように、げんなりする
蜘蛛の糸で星を引き寄せるような思いで
etcetc....
話の内容は砂の穴に閉じ込められた男の話である。穴の中ではひとりの女が暮らしている。そして、砂掻きを永遠にやらされる。
読み進めていくとわかるのであるが、村は村でどこにも行けない、いわゆる閉鎖社会である。それを広げていけば、われわれは自由のようで自由ではない、つまり、砂の中に閉じ込められた男と同じという訳である。ぶっちゃけ、地球に閉じ込められている。
その閉じ込められた空間で、どのような幸福を見出すことができるのか、はたまた、できないのか。生きる目的とはなにか、それがこの作品の文学性を高めているのだと思う。
ただ、砂の穴に落っこちてそこから這い出ることが出来ないというのは、わたしには想像しにくく、設定に無理があるような気が最後まで消えなかった。
映像化されているらしい。ちょっと見てみたいな。