食欲、性欲、睡眠欲、さらに富、名声、愛国心、征服欲、優越感、競争心、こんなものを必要としなければ存在できないし存続できないとは。
小説とは人間を描くことであるが、もっと深く言えば、人間の性能の悪さを赤裸々に描いているようなものだろう。
最近AIがはやっている。倫理委員会がAIの使用基準を定めた提言書を作ったらしい。もし、うまい具合に人間にAIの機能が備わったとしたら、上記の性能の悪さと言うものは解消され、同時に小説もなくなってしまうのだろうか? もちろんそれはスーパーインテリジェンスにしかわからないことだろうが。
ただ人間はあまりにも矛盾が多すぎる。アドラーはすべての悩みは人間関係から生じると言ったが、人間関係から生じるものは矛盾である。
自己の欲望と自己の欲望を妨害する他者の欲望との矛盾である。とどのつまり、悟りの世界のような話になってしまうが、欲望がなくなれば矛盾は解消する。
しかし、他者とは自己の中に描かれる他者であるから、どれだけ己が欲望を消したとしても、他者から見て欲望を持った存在とみなされる場合、結局他者の矛盾に巻き込まれてしまう。