久しぶりにごつい本を読んだ気分だ。
内容は言語感覚にまつわるエッセイ。いや、反=日本語論というタイトルは内容と離れているのでは、とさえ思った。
蓮實氏の奥さんはフランス人で、息子さんはハーフ。フランス人の言語感覚、いや、言語を媒介にした社会感覚と、息子さんのバイリンガルの感覚、搦め手から日本を論じてみるという試み。
本書は1977年に出されている。この時代から、蓮實氏は民主主義とは排除と選別である、と言っている。これは、宮代氏がいう排除と選別とほとんど同義であり、40年以上経っても社会は変わっていないということがよくわかる。
民主主義は多数決ではない。代表者を選び出して、代表者が排除と選別を行うことである。
今回のコロナでも国民は一枚岩などでは決してない。完全なロックダウンを望む者もいれば、私やホリエモンやブラジル大統領のように放っておくべきだという意見の人もいる。
わたしやホリエモンは今の日本では排除される側と言うことになる。
「二個の者がsame spaceヲoccupyスル訳には行かぬ」
その他にも、漢字の音と訓について。
フランスの詩の教育。意味もわからないものを暗唱させる。
西洋では言語は音声が主であり文字は従の関係にある。
などなど、興味深い話が載っている。
何より、蓮實氏の文章がべらぼうに上手い。それだけで、この書の価値はあると思う。