これも名作と言われているものであるが、正直難解な作品である。
作品自体が読みにくいとか言う意味ではない。内容は、ごく平凡な家族のごく平凡な日常を、ところどころ切り取ったスケッチのような作品である。取り立てて問題が起こるわけでもなく、激しい感情の起伏があるわけでもない。日記を小説風に書いたような感じだ。
高橋英夫が解説を書いている。静物について書いてある一部分を抜粋する。
「静物」の位置づけと意味の了解が、庄野潤三論のなかでもおそらく最も難しい問題といえそうで、傑作という評価については誰が観ても異論がないのに、世界の底の方にそっと湛えられている不安に乗ったような感じの平和な親子五人の日常はどう理解、評価したらいいのか、むずかしい。
傑作という評価については誰が観ても異論がない、というが、わたしはこれのどこが傑作であるのかさっぱりわからない。時代的なものもあるのだろうか。文章だけからでは分からない、なにか当時の世相にリンクしたからくりがあるのだろうか。
高橋英夫氏をして「むずかしい」と言わしめる作品である。わたしごときに分かろうはずもあるまい。