芥川賞作品。コンビニは社会の縮図というテーマだ。社会に適応できない主人公は、コンビニ店員というルールを纏うことによって、その中の歯車として回転することが出来る。
だが、この考えを敷衍すると、だれもが社会の中の一員というルールを纏って、その歯車となっている。そういう世界の景色が透けて見えてくる。人間、多かれ少なかれ、環境に規制されて生きている。その役を演じて生きているのだ。
こう書くと難しい作品に聞こえてしまうかもしれないが、そんな大きなテーマをコミカルに描いている。エンターテイメント作品としても十分に通用する傑作である。
ジニのパズルと芥川賞を争った。わたしはダブル受賞でもよかったのではないかと思うが、ジニのパズルは少し政治的要素が強すぎ、それこそ、社会の中の芥川賞として忖度が働いたのかもしれない。もちろん、そんなことはないと言うだろう。だが、忖度とは、意識に上らないからこそ忖度なのである。コンビニ人間に戻して言うと、我々の行いは規制されているにも係わらず規制されていることに気がつかない、その人々の無邪気さをこの作品はあぶり出している。
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