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レガタムランキングとどぶろくについて。壬生義士伝のワンシーンから、現在の日本の自由度を嘆く

何日か前のyahooのトップニュースにも載っていたから、見たひとも多いだろうが、世界の国の良さランキング、みたいなのがある。

イギリスのレガタム研究所というところが毎年発表している。GDPではなく、健康とか環境とか安全とか8つの指標ではかる。毎年ノルウェーとかニュージーランドが1位で日本は20位くらい。代わり映えしない。

この指標があるのは知っていたが、では、中身はどんな具合かとPDFをダウンロードして見てみた。以下のサイトからダウンロードできる。

すると、かなり予想外の結果だった。

 

www.li.com

問題のランキングページの魚拓。

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日本は23位。だがその内訳が問題だ。

左から4番目=Personal Freedomと、五番目= Social Capitaの指標が著しく低いのがわかるだろうか。

日本は近所づきあいが極端に希薄であり、超個人主義で、これはある意味ポストモダンなので、この99位というのはある意味仕方がない。

だが、個人の自由、社会的寛容が46位というのには驚いた。わたしは全くアベガーではない。日本の民主主義は正しく機能しているし、報道の自由は勝手に報道が自主規制しているだけで、馬鹿でなかろうかと思っている。

ネットでアベガーとか書き込んでも逮捕される心配はない。この国は自由だ。それなのに、ドミニカに負けてブラジルに負けて南アフリカ共和国にすら負けている。納得がいかない。

 

日本は自由ではないのか?

 

そこで、日本が自由でない理由を探してみた。その一つがこの壬生義士伝のシーンである。

 

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斎藤一が孫を連れて医者である千秋のところに行く。千秋は金ではなく酒で看てくれるという噂を聞いていたので、斎藤は診察代として酒を持っていく。しかし、みんな金でなく酒で払うので、千秋の診療所は酒だけ、というシーンである。

 

わたしは最初このシーンの意味がわからなかった。わざわざ酒を買って持って行くなら、金を払えばいいものを、と思っていた。だが、実は違うのだ。明治の終わり頃まではみんな酒を家で造っていた。

写真の酒を見て欲しい。これは清酒ではない。どぶろくである。

諸賢は酒造りは難しいと考えているだろう。が、実は超簡単である。容器にに水と米と米麹とドライイーストとヨーグルトを入れてしばらく放っておけば酒の完成だ。youtubeで造っていた。

 

サクッと簡単!どぶろくの作り方 - YouTube

 

カップラーメンはお湯と加薬と乾燥野菜や特性ゴマタレ、などを入れる。カップラーメンと面倒くささはさほど変わらない。ただ、時間がかかる。さすがに3分では出来ない。

しかし、こんな簡単なことでも、日本では違法であり製造した者は酒税法第54条により10年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる。

明治32年に自家醸造が禁止されて以来、日本では無免許での酒造りは禁止されている。東北地方などでは、禁止後もみんな造っていて、相当厳しく取り締まられたと聞く。

で、現在の日本人は酒を造るのは犯罪だとみんな疑うこともなく信じている。だが、それがPersonal Freedom=46位という順位に反映されているのではなかろうか。

世界に目を転じれば自家醸造を禁止している国は見当たらない。過去には韓国やイギリス、アメリカ、も禁止していたが、いまはそんなことはない。中国だってOKなのである。

そもそも、禁止された当時、酒税は税全体の32%を締めていた。が、H28年度の税収に占める酒税の割合は1.3%に過ぎない。

どぶろく裁判というものがある。

どぶろくは日本古来の食文化の一つであり、日本人は伝統的に酒を醸していた。これを禁じるのは個人の幸福追求権を規定した憲法に違反するので、自家醸造を禁止する酒税法違憲である。

という理屈だ。

最高裁まで争ったのであるが、「税収確保の見地より行政の裁量内」ということで、合憲になってしまった。

どぶろくが解禁されたら酒蔵が困る、という理屈もあるが、これは税とか経済とか既得権の問題ではない。これは日本人の精神の問題である。日本人の伝統と文化と精神が国家によって抑圧されている、それとの戦いなのである。この戦いに勝利してこそ、Personal Freedomは成し遂げられ、全てをマネーで解決する生活態度と決別し、味噌や醤油や酒をそれぞれの家庭が造り、家庭の絆を育み、それらを近所で分け合う。 Social Capitaはそうして生まれるのである。マネー万能主義からは生まれない。

捕鯨を反対されて、「捕鯨反対は日本文化に対する挑戦である」と憤るなら、自家醸造禁止にこそ怒るべきではないか。

わたしはアベガーたちには全く共感しないが、彼らが一言「どぶろく」と言ってくれれば喜んで手をつなぐのに。

 

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