警察に呼ばれて女の遺体を受け取りに行くというネタは夕映え天使と被る。しかし、こっちはあったこともない女の遺体を取りに行く。主人公は戸籍上女の亭主であるが、それは不法就労の売春婦が就労するための方便で、主人公は女に会ったこともない。50万円で籍を売ったのだ。
女は主人公のことを知っている。写真などでみて、趣味や特徴なども覚えている。それらは強制送還されないための方便なのであるが、女は主人公に感謝している。その感謝を死ぬ前に手紙という形でしたためる。
主人公は歌舞伎町で暮らしていて、シャバとムショを行き来するようなすさんだ生活をしている。その主人公の心を女の手紙が激しく揺さぶる。
おそらく、主人公は女の純真に打たれたのだろう。日本に来て、搾取されるだけされて死んでいく。その女の最後のよりどころが会ったことすらない亭主。想像上のよき亭主に自分はよき妻となれるのか。
男は、女の想像とかけ離れている自分が、あまりにも女にとって不憫で悲しくなる、そんなところか。
日本文学100年の名作第10巻を読み終えたので、いま9巻を読み始めた。ラブレターはここに収められている。

日本文学100年の名作第9巻1994-2003 アイロンのある風景 (新潮文庫)
- 作者: 池内紀,松田哲夫,川本三郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/04/30
- メディア: 文庫
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ラブ・レター映画化。