最初は前衛小説の匂いがして、これは最後まで読むのはちょっとつらいかな、などと考えていたが、いきなり朝鮮学校の話になって、ここからはべらぼうに面白い。ノンストップで読み終えるおもしろさだ。
ネタバレ注意。
内容を簡単に話すと、朝鮮学校に通う中学一年生の女子が、金日成、金正日の肖像画に違和感を感じている。時は1998年。テポドン事件が起こる。朝鮮人に厳しい目が向けられて、頭にきた中1女子が教室に飾ってある金親子の肖像画を四階の教室から校庭に投げ捨てるという英雄的行動をなすのである。
近頃はJアラートが鳴ったり、日々北朝鮮に不快な思いをさせられている我々には痛快な話である。ある意味勧善懲悪作品である。
もちろん、作者はそんなことを考えてはいないだろう。別に日本人に肩入れしているわけではなく、朝鮮学校の生徒をいじめる悪い日本人が多数出てくる。
文章も上手いと言うより面白い表現がいろいろあって楽しめる。おそらく、複数の言語から連想して書かれているのかもしれない。不思議な感覚の日本語だ。
最近読んだ中では文句なく面白い一冊。