文学・文具・文化 趣味に死す!

小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

アフターワクチン 第11回 その3

 

 僕は思わず前のめりになり、机をガタリと揺らしてしまった。なにから伝えようか、未来の話しをそのまま伝えても、SFの見すぎだと思われるだけだろうか。僕は冷静を装って、
「ですよね。なんかイスラエルとかデータ見ると全然効いてないし、この前の群馬の施設のクラスターなんてみんな接種者で、感染率は二十四倍ですよ、未接種者の。マイザーが七月に四万人の研究結果で死亡者数は接種者もプラセボも変わらないって発表している。そもそも、このコロナ騒動で亡くなってる人数、インフルエンザや自殺と――」
「裕二君」と理恵は僕のヒートアップする言葉を遮る。「ワクチンが本当に効くなんて思っている人はごく僅か。みんなワクチンの効果なんてどうだっていいと思ってる。打たなきゃならない空気、それがわたしにとっての悩み」
 彼女を殺したのは僕だったのかも知れない。裕二の死もあり、僕は彼女を渋谷の接種会場に連れて行って一緒に打った。あのとき、彼女はなにも言わなかったけれど、僕のやったことは彼女にとって圧力でしかなかった。僕は世間の空気と一体化して、彼女の心を潰していた。彼女にとって、空気とは具体的にこの僕だったのだ。
「ごめん」
 思わず謝っていた。
「……? なにが?」
「だって、兄貴、ワクチンに危険性感じてないし」
「普通の人は感じてないよ。だから空気になっちゃう」
「もし、兄貴が先輩の意思を無視して強要してきたり、少しでも軽蔑するようなことしたら、すぐに別れていいから。そんな兄貴は先輩の夫として不合格です。おれが落第させる」
「ありがと。でも、達也はそんな人じゃないよ」
 その後、僕たちはたわいもない話をした。時々、僕は達也の記憶に触れてしまって、あれ、どうして裕二君が知ってるの? などと驚かれる。いや、兄貴から聞きました、などとごまかす。
 死んだ妻と、こうやって話しが出来るなんて、まるで夢だ。僕が十年前の弟の体に入っているというのもまさに夢なのだ。この夢の世界の平和を護る。彼女を護る。由奈を護る。僕自身である達也も護ってやる。それがきっと、この世界にやって来た僕の使命に違いないから。
 僕は歩いて帰れる距離。理恵は小川町から帰る。手を振って改札の奥へ消える理恵を見送った。その姿が由奈と重なった。理恵は僕の妻だ。でも、この十年前の世界の理恵は、十年前の僕の妻だ。裕二の体に入っている僕の妻じゃない。どんなに頑張っても、僕の愛は彼女には届かないし、届いたらダメだ。
 それよりも、この世界の僕である達也は、理恵がもしワクチンを打たないといった場合、不思議がって、おそらく、ちょっとした説得も試みて、打たせようとするはずである。それは、悪気があってのことではないが、彼女の心を曇らせてしまう振る舞いだ。
 しかし、仮にこの時代の僕を説得して、今ワクチンを打つことを回避できたとしても、このあとのワクチンパスポートやワクチン接種法による義務化をどう回避していくかという問題が残る。あまりの前途多難さに、気がつくと僕は昌平橋の上で、「あぁぁぁ……」と呻ってしまっていた。

 

 

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今日はべらぼうに寒かった。外仕事で、三時間くらい外に立っていたが、凍えて死にそうになった。仕事が終わった後も二時間くらい指先の痺れはとれないし、いまでも鼻水ずるずる。風邪引いたか。コロナになったか。

 

マスクはほんとやだ。外で声を出さなきゃで、しゃべり続けていたがマスクの内側が湿っぽくなってくる。喉が痛い。マスクのせいだ。ワクチンだけでなく、マスクの健康被害も半端ないんじゃなかろうか???

 

反ワクチン小説の次は、反マスク小説だ! ってか、もういい加減取ろうマスク。感染がいない状態でみんながマスク。バカみたい。ってかおまえが率先して取れって話し。勇気がなくて済まん(T-T)

 

アフターワクチン 第11回 その2

 

 靖国通りから一本入ったところにある肉バルにした。
 緊急事態宣言が終わり客足が戻ったものと思っていたら、店内は僕たちともう一組しかいなかった。席ごとにカーテンで仕切られ、アクリル板が乱立していて、あまりいい気分はしない。僕はアクリル板を横にどかした。
 マスクとアクリル板が消えない限り、店に客は戻らないのではなかろうか。マスクを付けたり外したりしながらする食事は鬱陶しいことこの上ない。堂々とみなが外せばいいのに、誰か一人付けていると、気を遣ってしまうのかも知れない。
 肉料理がつぎつぎ運ばれてくる。僕は結構肉好きであるが、弟はそんなに肉が好きではなかったかも知れない。チーズや肉を摘まみつつ、ワインを飲む。悪くない。
「なんか、二人でこうしてると、面接みたいだね」
 理恵が唐突に言った。
「面接?」
「わたしが裕二君の義姉に相応しいかどうかの面接」
「なるほど。面接だ。厳しくチェックしなきゃ」
「うわ、緊張してきたよ」
「大丈夫。合格しました」
「早っ、なにそれ」
 と理恵は笑った。
「それでは、合格お祝いを進呈します。兄貴にも渡しといてもらっていいですか」
 僕は裕二が過去の僕のために買った時計と、十年後理恵に渡そうとしたネックレスを、目の前の理恵に渡した。
「え、ちょっと、悪いよ。達也のはともかく、わたしがもらっちゃったら」
「お義姉さん、遠慮しないで」
 理恵は僕のプレゼントを取り出し、
「え、だって、これダイヤモンド」
「結婚十周年と被っちゃうかも知れないけど、その時は兄貴になんか別なもの、もらってください」
 理恵はプレゼントを包み直して鞄にしまう。
「ありがとう。なんか気を遣わせちゃって」
「気なんか遣ってない。二人には幸せになってもらいたい。いや、絶対幸せになるんです。おれが保証します」
 なんか、裕二君、キャラ違くない? 理恵はくすくすと目を細める。
 その通り。僕は裕二じゃない。これから十年間、君を愛した達也だ。そのことが告げられないのが悔しい。
「その新聞、昨日のデモ?」
 と僕の開けたままになっている鞄の中身を、理恵が指さす。
「あ、はい。そう」
 僕は三紙とも取りだして机の上に並べた。
「ニュースだと、非正規、若者達の暴動だって書いてあったけど、SNSとか見るとワクチン反対のデモだったみたいだね」
「どうしても反ワクチンは報道したくないらしいです」
「ねぇ、裕二君。ワクチン打った?」
 聞きにくそうに、遠慮がちに理恵は言った。
「いえ、あまり気が進まなくて、打ってないです」
 ぱっと彼女は顔を輝かせた。
「やっぱり。だよねっ。わたしもあれ、なんか怪しいと思ってるんだよね。人には言えないけどさ」

 

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Amazonプライムは倍速再生とかができない。しかし、クロームプラグインで出来ると知り、さっそく入れた。サクッと一時間でサンダーボール作戦を観てしまった。

 

こういう観方は邪道だと前に記事になっていたが、時間がないのでしょうがない。プライムの007無料もすぐ終わるだろうし。ちょっとこの観方であと何本か観てみる予定。

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ  映画館で観てきたぜ!

言い訳であるが、小説が滞っている理由に、ダニエルクレイグの007過去四作品を見返していた、というのがある。

 

もちろん、新作を観るためである。

 

クレイグ版007はどの回を観ても楽しめるが、一応物語は連続している。

 

さて。今回のノー・タイム・トゥ・ダイであるが……

 

 

ネタバレ注意!!!

 

 

コロナで1年半公開が延期された。

その理由は簡単だ。この映画の悪役はウイルスを巻いて人を殺すという内容。

なんともタイミングの悪すぎる設定。

悪役はテロで細菌を広める計画らしいが、現実世界の方はもっと巧妙で、人々の利他心や社会的義務などに訴えかけて、自らワクチンを打つように仕向けている。そして、利他心や社会的義務が通用しなくなると、未接種にペナルティを科す形でワクチンを投与している。グリーンパスだ。

 

バイデンやファウチや尾身などの真の悪を観ていると、テロリストのやることなんて子どもの悪戯レベルである。やはり恐れるべきは国家権力である。リバイアサンである。ホップスはリバイアサンを平和の神などと呼んでいるが、制御不能の怪物でしかないのだ。

 

さて、肝心の内容。

アクションは最高のひと言。これだけで、金を払う価値はあると思う。

 

ただ、シナリオは……、うーん、ないわ。

そもそも、ボンドが最後死ぬ時点でないわ。

一応エンドロールの終わりには、James Bond Will Return.と出てくるが、きっとクレイグではない。いや、わからない。クレイグはえらい老けて見えるがまだ53歳である。

 

ほかにも、首を捻ること盛りだくさん。

 

謎なのは能面である。普通ミステリーで顔を隠す理由は、仮面の犯人が実は身近な人物だった、とか、仮面の下にAやBやCなど複数の人物が入れ替わるから顔を隠す必要があるのに、この能面は全く顔を隠す必要がない。能面=サフォンである。

 

さらに、少女時代のマドレーヌを殺しに来るサフォン、サフォンとマドレーヌは役者の年齢だと4歳しか離れていない。だから、マドレーヌが10歳だとしたらサフォンは14歳中学二年生だ。ありえん。

 

しかも、なぜか殺さずに助ける???? わざわざ殺しに来たのに。

 

そのあと、マドレーヌの子どもも誘拐しようとするが、「おれと来るのが嫌ならどこでもお行き」とあっさりと解放する。そんなあっさり解放するなら最初から連れてくるなって。

 

サフォンの日本趣味が耐えがたい。畳をコンクリート打ちっ放しの上に敷くは、洋服の上にジャケットみたく羽織を羽織るは、日本ってそんなに毒草のイメージがあるのだろうか。

 

能面の時点で嫌な予感がしていたが、的中。どうせなら下駄履いて部下は全員忍者くらいにして欲しかった。

 

そもそも、日露間で揉めてる島って北方領土? そこにミサイルぶち込むとかもうあり得なさすぎる。

 

誰かが書いてたが、スパイ系アクション映画というよりは、スタローンやシュワちゃん的なマッチョ系アクション映画になっている。これまミッションインポシブルにも言えることだ。

 

敵の裏を掻くとか、謎を解き明かす、とかはなく、ラッセル車のごとく敵陣に突っ込んでいく。

 

最後の、「げ、思ったよりもデカかった。持ってきた爆薬じゃ全然足りないから爆撃しろ」とか悲しすぎる。

 

これじゃ終われないだろ。トムは55歳でM:Iをやっているのだから、クレイグもぜひ、もう一度、本当のラストを見せてもらいたい。

 

タイトルが「死ぬには早すぎる」である。意味深なタイトルである。

 

今なら全部プライムで観られる。