浅田次郎の新刊を新品で定価で買った。単行本を定価で買ったのはいつ以来だろうか。出版不況を自分で感じてしまった。
あらすじは、カード会社の新サービス、ふるさとをあなたへ、という、架空の故郷と母親が用意されていて、クライアントはその設定を楽しむというもの。非常に面白い設定である。
出てくる人物もみんな善人ばかりで、読んでいて嫌な気持ちはひとつも起きない。安心して読める作品である。ただ、あまりにもみんな善人過ぎてしまっていて、ちょっと文学性に劣るのではないかと感じた。リアリティが損なわれてしまってはいないだろうか。
あと、文章にキレがなくなった気がする。霞町物語や神坐す山の物語では文章にズタズタに切り裂かれるほどの衝撃を受けたものだ。
というケチをつけてみたが、そこは浅田作品、面白さは折り紙付。浅田ワールドが好きな人はぜひ読んでもらいたい。