バカ売れしている。本屋に行くと1位の段に輝いている。なんとなく売れる理由がわかる。というのも、この作品、主人公は七十四歳の老境で、その老境が存分に書かれている。しかも、夫に先立たれ、子どもたちからは距離を置かれ、と悲劇的であり、かつ、そのくらいの年齢ならばさもありなん、という一般性も有している。
わたしはまだ三十代なのでこの作品の奥深さは理解できないが、おそらく、六十代、七十代が読めば非常に共感できるのではなかろうか。老人の「人間失格」的な作品なのかも知れない。
選評には東北弁が文学の新境地みたいなことが書かれていたが、東北弁はちょっとしたアクセントにはなり得ても、基本的に読みにくい。あまりやり過ぎると滑稽になる恐れがあるから、方言は難しい。