60歳童貞の超有名鑑定士が若い女性に嵌められる話だ。
ジェフリー・ラッシュははまり役だ。この人の着こなしはクラシックでありスーツやネクタイの美しさを惜しみなく表現している。英国王のスピーチの時も感心したのを覚えている。
ちょっと依頼人の家の由来を調べれば、すぐに詐欺が発覚するので、あり得ないお伽噺に過ぎない本作であるが、お伽噺ゆえに明確な教訓を感じた。この鑑定士に限らず、恋をすると目の前の真実が分からなくなるということだ。大体、真実の愛とはなんぞや?
本作の面白いところは、美術品の真贋と愛の真贋をかけているところである。そして、本物とは何か、それをテーマにした作品であるとも言える。
鑑定士と女は、どこまでが真実で、どこからが偽りだったのだろうか? それとも、その境目などは存在しないのだろうか。鑑定士がロンドンから帰ってきて、隠し部屋の絵画が持ち去られているのを発見するまでは、愛は真実であったはずだ。少なくとも鑑定士の中では。鑑定士がロンドンからの帰りに事故で死ねば、愛は永遠であった。
そんな小難しい話に興味はないよ、という読者も、ジェフリー・ラッシュの着こなしは一見の価値があるはずである。
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