なかなか面白かった。武市半平太というのがまた微妙で良い。
過去の偉人が現代に蘇る、というのはよくある設定で、最近では帰ってきたヒトラーが有名だろうか。
大杉栄が現代に蘇るアナーキー・イン・ザ・JPも面白かった。読み返したい一冊である。もう10年も前の作品になるのか。
ただ、武市半平太。どういう人物か今ひとつわからない。まじめ一筋、という設定だが、元がわからないのでなんとも言い難い。それよりも、理想の武士の形を武市に託したといった方が良いかもしれない。
龍馬の扱いがぞんざいでウケる。龍馬と武市が現在の日本を見て言う。150年後の日本も悪くない、と。
だが、これは150年後だから言えるのであって、戦中の1944年あたりに生まれ変わってたら、「なんじゃこのヒノモトはぁぁぁ!」となっていたのではあるまいか。
つまり、武市が目指した尊皇攘夷運動と現在は距離が遠すぎる。武市にとっては異世界なのではなかろうか。
不良集団をぶちのめしたり、殺陣もちゃんとある。
幕末のあの時代は、ヒノモトの未来を憂い、命をかけて活動することが出来た。しかし、今はヒノモトの未来と言ってもせいぜい「安倍がー」ぐらいで、その安倍さんも退陣宣言してしまった。
ヒノモトの未来。問題は山積しているのであるが、一番の理想は現状維持、という緩やかな衰退に対して、憂いや怒りの炎は燻るだけである。