名作中の名作と言われている作品である。
わたしは開高健の名前をその作品ではなく、万年筆で知っていた。モンブラン149の1970年代ごろの作品が開高モデルと呼ばれている。開高健が使っていたからである。もちろん、モンブランが公式に発売したものではなく、ファンが勝手に名付けたものである。
誰々モデル、と名前がついてモンブラン149を使っている作家は腐るほどいるが、名前の冠がついている作家はあまり聞かない。
何が言いたいのかというと、それくらい、万年筆によって紡ぎ出される文章に人々が酔いしれたと言うことである。直筆原稿版が出ていることもその証左である。
作品自体、決して分かりやすいものでも楽しいものでもないが、それでもグイグイと読ませるのは文章と思想が空回りすることなく、しっかりとかみ合って訴えかけてくるからだろう。
とくに、湖に出かけて魚釣りを始めてからは圧巻で、作品に引き込まれること請け合いである。
この作品は輝ける闇とセットで書かれていて、どちらから読んでもいいらしいが、輝ける闇も当然読まなければならいことは言うまでもないことである。