ブリオーニは高い。ジャケット1着70万円だ。さすがに買えない。せめて実物を見物しようと、ぶらりと入ってみた。諸賢はこういう高級店は入りにくいと思っているだろうが、それは思い込みである。ユニクロやしまむらと同じように、入り口から入ればいい。
定員に追い出される心配はない。彼らは入ってもらうために扉を開けている。もし追い出したりすれば、それは彼らの自己矛盾である。億万長者でもユニクロを着ているご時世。外見でその人の財布を判断できたら、神の領域である。
定員は実に気さくで、軽く雑談した後、ブリオーニに来るのは初めてか、というので、キートンには行ったことあるけどね、と答えると、ぜひブリオーニも着てみてくれ、ということで、つぎつぎ試着を進めてくれる。なので、わたしは5着ほどジャケットとスーツを着てみた。
ブリオーニはまず、信じられないくらい軽い。着ているのか着ていないのか分からないほどだ。ここまで書いて、去年キートンに行ったときの投稿を確認したら、ほとんど同じ表現だった。キートンもブリオーニも着心地は完璧である。
ブリオーニはブリオーニ学校の卒業生が約200の工程を約200人で分担して作っているという。ブリオーニとキートンはもちろん違う作り方をしている。それなのに、着心地がここまで似通っているというのは、お互いがジャケットに完成形を表現しているということなのかもしれない。
なので、店員に、キートンと比べてどうだ? と問われて困ってしまった。
わたしは、「どちらも素晴らしい」と答えた。残念ながら今のわたしにはそれ以上の感想を述べるスキルは持ち合わせていなかった。
スーツの着心地は、着丈や袖丈やチェストがジャストフィットのものを選び、前習えをするとよくわかる。本当はそこまでしなくても、着た瞬間にわかるのであるが、よりはっきりと違いを知るには前習えがいい。
ちょっと、本気でブリオーニのジャケット、もしくはスーツが欲しくなった。高いがはっきり言ってそれだけの価値はある。これは、値段の問題ではない。値段がついているだけ良心的かもしれない。