最近漢字の語源を調べることが多い。
しかし、中国人はすごいものを発明したものである。
犬、とか、草、とか存在する物を象形文字として表すのは簡単だっただろう。しかし、概念を文字にするのは困難だったはずである。
たとえば「愛」などは、もともと「振り返る」とか「こっそり歩く」とかいう意味から、愛情という意味にを与えてしまった。
で、一番概念として形に出来ない物は何かと考えたとき、「無」を於いて他にあるまい。
無。ないのである。ないものを形で表す。至難の業である。
無の象形文字はこんな感じだ。
これはなんと人が袖を振って踊っている姿らしい。
現在ではこれに足が付いて「舞」という文字になっているが、古代文字では「無」も「舞」もほとんど同じである。
では、なぜ無が「ない」という意味になったかというと、「无」と「亡」に発音が似ていたからだという。
「无」は「亡」の異字体。
亡は死者が足を折っている形。
なぜ、舞うの意味だった「無」が、発音が近いからなどという理由で「亡」になってしまったのか。
おそらく、縁起ではなかろうか。われわれもゴミ箱を護美箱と書いたり、梨の実を「ありの実」と言ったりする。そんなことをしている内に、亡が無になってしまったのではないだろうか。