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小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

かたつむり注意報 を読んだ

 

いのちのパレード (実業之日本社文庫)

いのちのパレード (実業之日本社文庫)

 

 

いのちのパレードという短編集に収められている。

恩田陸のデビューは日本ファンタジーノベル大賞最終候補作。この作品はまさに、タイトル通りである。巨大なカタツムリが現れる町。カタツムリが現れるときに注意報が流れる。幻想小説である。本当にそれだけの話なのであるが、かたつむりの描写、そんなものが現れる町の描写、夜の描写、またこの町の出身という女性の語り口、これだけで、荒唐無稽な物語を美しく、そして読むものを飽かさずに描ききる。ある意味、力業である。

 

 

 

アンボス・ムンドス を読んだ

 

アンボス・ムンドス―ふたつの世界 (文春文庫)

アンボス・ムンドス―ふたつの世界 (文春文庫)

 

↑表題作他、七編が収められている。

 

不祥事を起こした女教師が、数年後、旅先で小説家に不祥事の顛末を語って聴かせる、という形式をとっている。

小学校の女教師なのであるが、このクラスの女子のヒエラルキーなど、おぞろおぞろしく書かれている。すこしミステリー要素も含まれていて、引っ張る力はつよい。ただ、純文学であるので、ミステリー的要素は結論が出ない。

子供の世界は一見無邪気に映るが、こうやって詳細にあぶり出していくと、ルール無用な点、大人の世界よりも陰鬱である。子供という本来無垢なキャラクターを使っているところに、深みというか、恐ろしげなトーンを上手く表現している。

 

いつもの通りこれに収録されている.↓

 

冬の一等星 を読んだ

 

きみはポラリス (新潮文庫)

きみはポラリス (新潮文庫)

 

↑これに収録されている。

 

誘拐された八歳の女の子が、誘拐犯と心を通わせるという話。荒唐無稽であるが、この設定の魅力はたしかにある。この誘拐犯とは、世間秩序から逸脱した存在であり、その逸脱した存在を理解することにより、自らが社会の枠から脱し、ある種の非凡さに浸ることができる。

八歳の女の子がこれほどまでにませているかはともかく、だれにでもこういった成り行きによる逸脱というのは憧れの対象であろう。

誘拐されたあとに現れる警察や母親。これらが社会的存在であるならば、女の子と文蔵は文学的存在である。

 

↓こっちにも収録されていて、これで読んだ。