今週のお題「会いたい人」
正直、リアルであまり会いたい人はいない。あまり会いたくない人はいるが。
いま、太平記を読み進めている。さっきやっと三冊目を読了した。これでやっと半分なり。
しかし、あの乱世、狂った人間のオンパレードである。
誰に会いたいか。高師直に会いたい。
一度会うだけでいい。あまり親しくはなりたくない。
尊氏とか義直とかが普通人に見えてしまう。
三冊目の最後は21巻の最後にあたり「塩冶判官讒死の事」歴史に名を残すDQN=高師直の話である。
本当のDQNは一人では出来ず、周りにそれ相応の役者が揃わなければ駄目だ。
高は病気と称し引きこもって淫楽な暮らしをしていた。酒の肴に源平盛衰記の源頼政と菖蒲前との恋愛を聞く。源頼政が武に優れかつ雅人であり菖蒲前を一途に想ういい話なのである。
一座のものが「どうせ褒美にもらうなら美女よりも所領のほうがもっといい」というところ、高は、
「御辺達は無下に不当なるものかな。師直、菖蒲程の傾城(美女)には、国の十カ国、所領の二、三十カ所なりとも替えて賜らでは叶はじ」
するとその場にいた侍従の局が、
「菖蒲なんて大したことない。塩冶判官の妻はそりゃ信じられないくらいの美しさ」
それを聞いた高はどうしてもその妻が欲しくなって、吉田兼好に文を書かせたり、風呂を覗いたり散々したあげく、塩冶判官が謀反を企てていると尊氏に讒訴する。
ここで、塩冶も尊氏なり誰なりに、そんな事実はないと言えばいいものを、なぜか京を脱出して所領に帰り本当に謀反を企てる。
さらにおかしいのが、塩冶が京を出るとすぐに塩冶の弟が高の元へチクりに行く。
太平記ではこう書かれている。
「このころの人の心様、子は親に敵し、弟は兄を失はんとする習ひなれば、塩冶判官が舎弟四郎左衛門尉、急ぎ武蔵野守(高師直)がもとに行きて、高貞(塩冶判官)が企ての様、ありのままに告げたりけり」
恐ろしい限りである。
今の世間では検事総長の定年を安倍さんが無理くり延長させたとかが問題になるが、太平記の時代には裏切りは日常茶飯事、なんかあればすぐに殺し殺されである。