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李陵 中島敦 を読んだ 感想 レビュー

 

李陵

李陵

 

 

山月記も面白かったが、李陵はちょっとレベルが違った。

 

李陵という前漢の時代の武将の話である。北狄に攻め込んだ李陵は捕らわれてしまうのだが、その捕らわれた李陵の内面を、武帝司馬遷や、李陵と違い北狄の禄を食むのを最後まで拒んだ忠臣など様々な人物をちりばめて浮き彫りにする。

 

Amazonのレビューに「日本文学の奇跡」と書かれていたが、まさにこの作品は奇跡である。

 

わたしは最後、あの忠臣が武帝の為に慟哭したシーン、李陵はそれを見てどう思ったのか。気になった。あれは異常なシーンだ。それまで忠臣だと感じていた人物は本当に忠臣なのか。わたしの目には狂人に映った。

 

中島敦は33歳で夭折した。だから、ほとんど活動らしい活動をしていないのである。奇跡のような作品を残して消えてしまったのだ。もし、この作家が70、80歳まで生きていたら、日本文学の様相は今と違ったものになっていたと思わざるを得ない。