文学・文具・文化 趣味に死す!

小説家 星香典(ほしよしのり)のブログ。小説、映画、ファッション(メンズフォーマル)、政治、人間関係、食い物、酒、文具、ただの趣味をひたすら毎日更新し続けるだけのブログ。 ツイッター https://twitter.com/yoshinori_hoshi  youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC0YrQb9OiXM_MblnSYqRHUw

ネクタイをプレゼントする際のアドバイス

「人からもらったネクタイを締めるなど、お洒落に対して無頓着な証拠である」と言うような言説を度々目にする。本当にもらったネクタイを締めるのはお洒落に対して無頓着なのだろうか? 百貨店によると日本ではネクタイの売り上げの大半が贈答プレゼント用であるともいう。

わたしはもらったネクタイを締めるのが好きだ。なぜなら、自分ではそのネクタイを絶対に買うことはなく、従って、もらわなければ絶対に締めることはないネクタイだからである。

自分で選ばないということは、ある意味強制的にその格好をさせられているということで、強制というとマイナスのイメージがあるけれども、強制されることにより新しい発見があるのも事実だと思う。そのネクタイに合わせたコーディネートを考えねばならず、下世話な言い方をするならば、経験値が上がる、とも言える。

わたしも昔は効率至上主義で、プレゼントは現金に優るものはないと思っていた。しかし、マイケル・サンデルの議論を知り考えを変えた。サンデルの議論とは、「プレゼント=欲しいものをもらう」ことか、という問である。もし、プレゼント=欲しいものをもらうことならば、相手の欲しいものなど分かるすべもないので現金が良い。それか、欲しいものを聞いてそれを渡すかだ。だが、サンデルの議論ではこういう例が出てくる。

彼氏が車のカスタムタイヤが欲しいと思っていて、もし彼女から誕生日プレゼントにタイヤ四本セットをもらったら嬉しいか、という問題である。

やはりプレゼントは、相手のことをしっかりと考えて、ちゃんとした心構えであげるのが礼儀なのかも知れない。だから、もらった方も、信じられないくらい変な品物だとしても喜んで受け取るのが礼儀となる。

わたしはその昔、付き合っていた女性から指輪をせがまれて買いに行ったことがある。だが、しばらく選んでいるうちに全部同じに見えてきて、結局、金額だけ伝えて店員に選んでもらうという不実なことをした。

人間は興味のないものは全て同じに見えるという特性を備えている。同居人はAKBが好きで、誰々が何々、と写真を見せてくれるが、全員同じに見える。同様に、同居人も背広のコージラインの角度など気にしたこともないだろう。

だから、指輪を選ぶに当たっては、図書館なりで指輪に関するイロハ程度を学ぶべきで、その努力を惜しんではいけなかったのかも知れない。

昨今はなにかと忙しい世の中のせいか、相手のプレゼント選びにそれほど時間を割けない、故に、適当に選ぶくらいなら現金を、という現実があったのかも知れない。だが、大切な人にプレゼントを送るにあたり、時間に責任を押しつけるのはいささか薄情であろう。

そこで、殿方にネクタイをプレゼントしたいご婦人方にアドバイスをするとすれば、まずは観察である。普段彼がどのようなネクタイを締め、どのようなシャツを着て、どのような背広を所有しているのか。柄物が多いのか、無地が多いのか。カバンや靴の色も気にした方がいい。

もし彼がストライプの背広に、ストライプのシャツで、ストライプのネクタイを締めていることが多いなら、無地のネクタイ、もしくは、ドットのネクタイを送るのがいいかも知れない。逆に、大人しいアイテムばかりでそろえているのであれば、ペイズリー柄など加えてやるのも面白いかも知れない。

おそらく迷うはずである。それでいいのである。店員にアドバイスを求めるのはいいが、決めさせてはならない。それは店員の趣味に過ぎないからである。最後は感で選ぶ。こちらが出来ることは真剣に誠実に選ぶことまでで、気に入るか気に入らないかは相手の領分である。迷ったからといって2本も3本も送ってはいけない。それは現金を送るのに通じる発想であり、ロマンチズムに反するからである。