うーむ。貫禄が伝わってくる。
純米酒ではないのである。
そして、味も、最近流行の芳醇甘口ではなく、昔ながらの日本酒という味がする。
世に名高い久保田である。そういう先入観もあるのだろうが、
「美味いとか不味いとか、おまえの感想はどうでもいい。これが酒だ。黙って飲め」
呑み込んだ瞬間、腹の中から聞こえてきた。
決して、不味いとは思わない。特別に美味いとも感じない。呑んでいてくつろげる味である。構えるところがない。目眩がする美人でもなければ、造詣とはなんぞやと哲学的な難問をふっかけてくる個性的なお顔でもなく、隣にいて気にならない女という感じだ。ちゃんと料理を引き立てる。
一本置いておいたら、困らない酒である。