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第168回 芥川賞 候補作 井戸川射子(35)「この世の喜びよ」(群像7月号)を読んだ

 

 

私小説でもない。この二人称はなんなのだろうか?

 

本作は二人称でかかれているが、一体だれが語っているのか。作者だろうか。

 

小説の内容は単純で、主人公はショッピングセンター(イオンみたいな。モールじゃない方の)の喪服売り場のおばさん。おそらく、40代後半から50代? その毎日の繰り返しの、子育てが終わりやることがなくなったような、悲哀のような日常が描かれている。

 

そのショッピングセンターで13才の少女と出会う。ちょっと生意気な少女だ。その少女との心の交流が描かれている。

 

まさに、純文学である。あまりにも純文学である。

 

焦点が非常にぼやけている。少女とのやりとりがメインなのだが、ところどころに回想が挟まり、おばさんの娘などが出てくる。

 

ゲーセンの若いあんちゃん。同僚、などももっと話に食い込んでくるのかと思ったら、装飾に過ぎない。

 

一番気になったのは、主人公がこの年代の女性らしくないことである。中にはこういう人もいるのだろうが、なんとも違和感が最後まで残った。イメージ的には、80、90歳の人生の終わりが見えている人間のように感じるのだ。

 

何もない日常に囲まれて身動きが取れない苦しさ、そこから逃れられない諦観のようなものは伝わってくる。

 

ただ、小説作品としてどうだ、と言われると、もう一ひねり欲しい気がする。