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第167回 芥川賞候補作 小砂川(こさがわ)チト「家庭用安心坑夫」(群像6月号)

 

 

この作品は文章が上手い。

 

意味不明な、精神がおかしい主人公、支離滅裂な話を文章の上手さ一本でカバーしている。

 

もし、掲載される媒体を伏せて、この作品の原稿を読んでジャンル分けせよ、と問われれば、「ホラー」に分類する。

 

そのくらい不気味に感じた。

 

古川日出男氏が選評で書いている。主人公は「信頼出来ない語り手」の一人称で書くべきであった。まったく同感である。

 

この小説の主人公は、おいしいごはんが食べられますように、の主人公のように、裏と表を使い分けられるサイコパスではないのだ。完全にいかれているので、三人称で書いてしまうとただの変な人になってしまう。

 

らりった人間のらりった動機を書かないと、単なる意味不明な話になってしまう。

 

しかし、この小説はそのあたりを無理矢理文章でカバーしているのだ。読ませる文章である。

 

おそらく、この作者はどんな話を書いても、読者に作品を読ませることが出来るのではなかろうか。その作品が面白くとも、そうじゃなくとも。