まず、この映画が2007年に撮られていることに驚きである。
1978年当時、もしくは4,5年後に撮っているものと勝手に思い込んで「よくこんな映画が撮れたなぁ」と思いながら観ていた。調べてビックリ。
古いのは時代ではない。映画の構成そのものが古い。というか、古き良き映画っぽい。
小説は純文学とエンタメに別れた。もちろん、その境界は明確ではなく、線を引くこと自体に異を唱えるものも多い。
私はこの線引きを肯定的に捉えている。それは、読者の心構えを喚起するからである。
映画は、アクション、ホラー、SFなどと別れているが、純文学的映画、というジャンルはない。ドラマ、というジャンルがそれに近いかも知れないが、ずいぶんと口ごもった命名だ。
1978年、冬。は純文学的映画だ。最近の映画は事細かに状況を説明して、観客が想像を働かせる余裕もなければ余地もない。(TENETは想像を働かせる余地は膨大にあったがその余裕はなかった)
1978年、冬。を観ていると、色々と考え込んでしまう。それは、登場人物の気持ちであり、あの時代の中国であり、それを比べる日本であり、また現代であり、私自身であったりもする。
これが映画だ、と思った。台詞で説明せず、淡々と映像を流す。役者が演技をし、その演技を観る。
ちなみに、サムネイルに写る少年は主人公ではない。この少年の兄が主人公である。兄は、北京から来た女の子と恋に落ちる。それも、相当にぎこちない恋である。
少年はこの1978年に10歳という設定であるから、制作時には40歳、兄と女の子は50歳近い計算だ。そういうことを想像して観る作品である。
ちなみに私は中国語の勉強をかねて観たのであるが、台詞がほとんどなく、さらに断片的で意味不明だった。中国語の勉強のために観るという方にはお薦めしない。