日本では税金を払うことを納税という。
税金は納めるものであって支払うものではない、という感覚が培われていると思う。
普通サービスの対価に対しては「支払う」が使われる。コンビニで支払う。ガソリン代を支払う。
納めるは税金とせいぜいお月謝くらいではなかろうか。
納税者の英語はTaxpayerである。
普段は言葉の意義などに目くじらを立てることはないのだが、ふるさと納税だけは完全に納税という言葉の感覚を悪用した、もしくは、作った管さんも勘違いしているのではないかというゆゆしき事態に陥っている。
古今東西、様々な悪法や悪制度があるが、ふるさと納税に優る悪法はないと思う。
税金とは行政サービスに対する対価である。図書館を作ったり、道路を作ったり、コミバスを走らせたり、戸籍を管理したり、ゴミを収集したり、行政サービスを支えるためのお金だ。
お殿様への上納金でもなければ、神様へのお布施でもなんでもない。我々が我々の暮らしを、生活を、社会を営むための会費である。国税庁のHPにも「税金は会費のようなものです」と書いてある。
[税って何だろう] 税は会費のようなもの | 税の学習コーナー|国税庁
それなのに、税金を行政サービスを受けていない別の自治体に支払う? 意味がわからない。応援したいから? そんな理屈が通用するなら、ケイマン諸島を応援したいからケイマン諸島に税金を払ったってなんの問題もない。
返礼品が得だから違う自治体に納税する人間は、ケイマン諸島に納税して節税しているずる賢い富裕層を批難する資格はない。
ふるさと納税とは、セブンイレブンで商品を手に入れて、ローソンを応援したいからとローソンに金を支払うようなものである。
この制度を考えた人は(管さんらしいが)頭が狂っている。政府が税金という最も社会の根幹となるモラルを破壊しているのだ。
そう考えると、「自助、共助、公助」の意味がなんとなくわかる。
庶民「税金が高いよ-!」
管「まずはご自分でふるさと納税制度を活用して節税しましょう」
国が節税を唱える国など聞いたことがない。
さらにこの制度の狂っているところは、ふるさと納税で減収となった分の75%が普通交付税の基準財政収入額に算入される、という、嘘の上塗りで訳がわからなくなった状態だ。
先ほどの例えだと、セブンイレブンで商品を持って行った客が、ローソンを応援したいからと1000円分をローソンに支払うと、セブンイレブンは国から750円もらえるという仕組み。
もう一度言う。税金は行政サービスに対して支払う社会の会費である。故に、議会は税金の無駄遣いがないか厳しくチェックする。1円たりとも我々の税金を無駄にしないためである。
横浜市、ふるさと納税による税流出額131億円 19年度: 日本経済新聞
管さんはもともと横浜市会議員とのこと。横浜市に貢献したと言うが、云百億円も損害を与えているこのことを、どう考えているのだろうか?
さらに言うと、金額もさることながら、この問題はモラルの問題なのだ。健全な社会のあり方に関する問題なのだ。
コロナ対策もいいが、今すぐこの悪法を廃止することこそ、真っ先にやるべきではなかろうか。