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葉桜の日 を読んだ。感想。レビュー

 

葉桜の日(新潮文庫)

葉桜の日(新潮文庫)

 

 

鷺沢萠はブロ友の湊さんが贔屓にされている作家さんで一度読んでみたいと思っていた。

 

ふらっと入った本屋にぱっと目にとまったので購入。

 

女流作家、35歳でお亡くなりになっている。なので、若い女性が書いた軟派な作品かと思いきやさにあらず。かなり硬派な文学作品だった。ジャンル的にはガッツリ純文学である。

 

ネタバレ有り。

 

出生のわからないジョージが主人公。育ての親である志賀さんと暮らしている。ジョージは19歳になり、自分のルーツを探し始める。自分は一体誰なのだろうか?

 

結局、育ての親だと思っていた志賀さんが本当の母親であるのだが、志賀さんはなぜそれを隠して養子にするなどという面倒な手を使ったのか。

 

志賀さんは在日でそのあたりを隠したかったのか。よくわからない。

 

この作品の面白かったところは、結局出自が明らかになったところで、自分が何者かなどは分からなく、むしろ、余計に分からなくなる、というところ。

 

著者の曾祖母が韓国人だったらしく、在日ネタが使われているのか、wikiを見ると、「執筆のための取材の途上に曾祖母が韓国人であることを知る」とあるので、この作品を書いていて見つけたか。

 

文章も人物も上手いのだが、なにより、プロットの立て方が秀逸だと思った。話の筋は「育ての親が実の親」というありきたりなものなのであるが、それをグイグイと読ませる。

 

本書には「果実の舟を川に流して」が併録されているので、こっちも楽しみである。