ネタバレ無し。
昔から三谷幸喜作品は好きであった。これもかなり楽しみにしていた。プライムになったのは嬉しい限りである。
内容としても、三谷作品という感じで安心してみられる。
ただ、そこまで傑作かと言われると、「マジックアワー」とか「今夜、宇宙の片隅で」や「笑いの大学」などには及ばない。
本作品はあまりにも設定が王道すぎる。あと、笑える箇所が少ない。状況で笑わすと言うよりも、細かい小手先のギャグに終始している。
せっかく総理大臣を扱うというのに、スケールが小さすぎる。
この作品の浅薄なところは、悪玉の鶴丸を単なる金と権力志向の悪代官に描いてしまったところである。
政治の世界で恐ろしいのは、ただ単に、金や権力を欲する政治家ではない。信念を持って政策を実現しようとする政治家がもっとも恐ろしいのである。憲法改正や徴兵制実現に情熱を燃やしている政治家はたくさんいる。彼らはそれが正しいと信じて疑わない。大阪都構想もそうであるし、移民排斥もそう。ゲルマン民族の生存圏確立を目指した政治家もいた。そして、これらの政策は賛否あるものの、住民もまた多く支持しているところにある。
単なる金と権力の悪代官などは、むしろ平和に貢献するのではなかろうか。鶴丸総理なら周囲との軋轢も生まずに、戦争なども回避できるような気がする。むしろ、中井貴一のほうが正しさを御旗に戦争に突っ込みそうだ。もちろん、戦争することが悪いとは言ってない。そこがまた難しいところである。
三谷は前にも「総理と呼ばないで」という政治ネタ作品を作っている。これは人気が全然なかったが、わたしは好きだった。
余談であるが、「誰かが、見ている」という作品を三谷はAmazonプライムで出している。壁に穴が開いていて隣の部屋をのぞける、という作品なのだが、開いた穴、ではなく開いた口がふさがらないほどツマラナイのである。エピソード8まで出ているが、3でもう見る力が尽きた。
三谷幸喜、才能全開の作品が見たい。